【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
金沢明子「イエロー・サブマリン音頭」
憲武●前回がクレージーキャッツで、ビートルズの新曲もリリースされましたので、今回は金沢明子で「イエロー・サブマリン音頭」です。
憲武●この曲は1982年に発売されました。作詞作曲はジョン・レノン、ポール・マッカートニー、訳詞松本隆、編曲萩原哲晶です。で、音頭と言えばプロデュースが大瀧詠一です。発売当時、僕はこの曲、「なんだかなー」って感じでした。「『潜水艦』ってなんだよ」とかね。クレージーキャッツの映画を浅草東宝のオールナイトで毎月のように観ていたのにもかかわらず、です。やはりビートルズの存在が大きかったんでしょうね。ビートルズの曲をこんなふうにしちゃっていいの? みたいな。
天気●へえぇ、そうなんですね。当時、快挙/怪挙! って感じでした。やりよったなあ、と。ビートルズとの距離感やスタンスの違いですかね?
憲武●そうなんでしょうね。当初のボーカル候補だった竹内まりやも「ビートルズに対する冒瀆だわ。シクシク」と泣いたそうです。でもその後、ポール・マッカートニーが、歌詞を変えてもいいとOKを出したことを知り、ポール自身もこの曲を気に入って、自宅のパーティーでみんなに聞かせてるって話を聞いて、「ポールがいいならいいよ」と自己変革に至りました。ははは。
天気●意外に、権威に弱いタイプ? お墨付きなら、いい、ということ?
憲武●んー、どおでしょー。いわゆるビートルズは別格でしたから。編曲の萩原哲晶は、クレージーキャッツの曲にはなくてはならない人ですね。「イエロー・サブマリン音頭」のイントロは「遺憾に存じます」のイントロ、これはビートルズの「抱きしめたい」です、ですし、他にも「ホンダラ行進曲」「スーダラ節」の一部もサラッと出てきますね。尺八も渋い入り方してますし、随所での音の遊びも楽しいです。
天気●仕掛けがたくさんありますね。
憲武●はい。凝ってます。なんと言っても特筆は金沢明子の歌唱でしょうね。小節がもはや芸術です。微妙な音の上げ下げが心地いいですし、声を荒々しくしたりしてるところもいいんです。ちゃんと「ウイ オール リブ」って日本語の発音で歌ってますしね。
天気●金沢明子がオオモテの頃がありましたね。
憲武●民謡界の百恵さんですから。今とあの頃じゃ、ものの受け取り方も感じ方も違う。そんなことを考えてみる冬の初めです。
(最終回まで、あと685夜)
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