【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】ジョージ・ハリスン「When We Was Fab」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】

ジョージ・ハリスン「When We Was Fab」

憲武●ジョン・レノンの命日は超有名で、誰でも知ってまして、俳句の季語にもなってるほどです。

天気●12月8日。この日は日米開戦の日。それから、童貞聖マリヤ無原罪の御孕りの祝日（聖胎祭）ですね。

憲武●あと臘八会もありませんでしたっけ？

天気●そうなんですね。

憲武●ですが、ジョージ・ハリスンの命日は、それほど知られていないようです。もしかしたら亡くなったことすら知られてないのかもしれません。

天気●それはない。

憲武●それどころか今となっては、ビートルズの元メンバーだったことも知られてないかもしれません。

天気●もっと、ない。

憲武●ジョージ・ハリスンは2001年11月29日に亡くなってまして、今年で亡くなってから、ちょうど丸22年。仏教ですと二十三回忌ですね。という訳で、George Harrison「When We Was Fab」。

 

憲武●この曲は1987年発売の「クラウド・ナイン」に収録されてます。シングルカットもされてますね。ラジオでタイトル聴いて「おっ」、曲を聴いて「おおっ」、MVをみて「おおおっ！」となりました。

天気●「ファブ」はファビュラス？　素晴らしい日々、楽しかったあの頃、みたいな感じですかね？

憲武●ビートルズの愛称としてFAB FOURという呼び方があったんです。FAB は fabulous の FABで、「素晴らしき4人」ってことになりますかね。タイトルは「俺たちがビートルズだった頃」ってことになると思います。歌詞にジョン・レノンやパティ・ボイドやを思わせる人物が出てきます。曲にも映像にも、いろいろと仕掛けがありまして、ビートルズの記号に満ちています。2:05あたりにビートルズの4人が揃う瞬間があるんですね。ジョージとリンゴ、それにセイウチの着ぐるみを着て、左利き用のリッケンバッカーを弾く人物がポール、あとでポールではなかったとわかるんですが、と、その前をニール・アスピノール。

天気●ビートルズが設立したアップル・コアの代表なんですね。

憲武●そうです。10代の頃からの友達のようです。彼が「イマジン」の裏ジャケットを見せるように通りますが、この裏ジャケットにジョンが映ってるんです。そのあとポール・サイモンが通り、エルトン・ジョンも通ります。

天気●顔が見えずに通りががる人たちも、見る人が見ればわかるのかもしれない。

憲武●曲を共作したジェフ・リンも出てますね。曲の特徴としては、やはり「アイ・アム・ザ・ウォルラス」を思い浮かべます。コーラスとか、ノイズの使い方とかですね。

天気●ストリングスも、「アイ・アム・ザ・ウォルラス」。ほかにも「A Day In The Life」の終盤近くのメロディに似通った箇所があったり。まだまだ引用がありそうです。

憲武●エコーかかったピアノは「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」でしょうか。ジョージ・ハリスンっていうのは、「All Things Must Pass」の中の「I Remember Jeep」などという曲を聴いてますと、ビートルズ的なものを一番色濃く持っていた人なんじゃないかと思えます。

天気●声が好きでしたねえ。リードヴォーカルをとる曲は多くなかったけど。

憲武●ポール・マッカートニーより、実はジョージ・ハリスンの方が好きだったんじゃないかと思うこの頃です。 

（最終回まで、あと683夜）