【解題】「後記」第293号
対中いずみ
この頃より三十年も後のことになるが、たまたま私は大雪の大原に出掛けたことがある。もともと予定していた吟行で、ここまでの雪になるとは思わなかった。怖いほどの大雪であった。難儀したが、二十歳の裕明が果たせなかった大原の雪にはどうやら出会えたようだ。
293号では雑詠欄巻頭二席に6句が掲載されている。巻頭は島田牙城。
氷屋の氷にしぐれゐたりけり
降りぎはの柳揺れゐる火桶かな
藁塚といふ大いなるもの倒す
桑枯れて空に水吹く消防車
霜除や下駄の鼻緒の朱も失せて
昼からは蔭なる障子開きあり
(太字は第一句集『山信』に収められている。「昼からは」には、「清水寺」と前書きが付されている)
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