【空へゆく階段】№89
「後記」第295号
「青」第295号(1979年4月)より転載
田中裕明
春休みのがき稽古会は吉川へ。総勢十人でだいすけさんのお宅に乗り込みました。爽波先生の句の通りすぐそこに田圃があって、嬉しくなって縁側へ湯呑を持ち出したのは青蛙さん。木曾や吉野ほど山と山の間隔が詰ってなくて風通しの良い明るいところです。木曾灰沢でも牛を見ましたが、どの家も二、三頭しか飼っていませんでした。吉川では何十頭も飼っている牛舎があり、しみじみと牛の顔を見ました。
「森澄雄読本」お読みになりましたか。僕はまだ随筆のところしか読んでいません。「妹への葉書」など僕に近い年齢の時の葉書ですが、親しみというより羨望(勿論、時代にではなく青年の精神の在り様へ)を感じます。本音をいってしまえば脱帽。『だがそれよりも激しく一日も早く戦線に出たいと思ってゐる。「蛇の口から光を奪へ」―激しいものの中にしか活路はないといふ、あるつきつめた気持になってゐる……。』
本号の青蛙さんの「私の読んだ本」本当は旧かなづかいなんですが、青の文章は現代かなづかいで統一しているので直しました。旧かな遣いのつもりでお読み下さい。
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