【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
ゆらゆら帝国「ラメのパンタロン」
憲武●知り合いの娘さんがベースをやってまして、ライブでゆらゆら帝国の曲をやったというので、ゆらゆら帝国「ラメのパンタロン」です。
憲武●この曲は『ゆらゆら帝国Ⅲ』(2001年)に収録されてます。知り合いの娘さんがこの曲をやったかどうかはわかりません。インディーズ時代のゆらゆら帝国は知らないんですが、メジャーデビューして、その名をちらほら聞くようになり、映画『愛のむきだし』(園子温監督・2009年)に「空洞です」「美しい」「つぎの夜へ」の3曲が使用されていたので、はっきりと意識しました。
天気●私もあとから知ったバンドです。『愛のむきだし』。この監督のは総じてダメなんですが長い映画が好む傾向があるせいか、かなり好きです。劇中歌も印象的でした。粘りっ気のある音がよくマッチしているように思いました。
憲武●あの映画には合ってると思いましたよ。「ラメのパンタロン」は歌詞はよくわからない、ロックな歌詞です。「退屈でクソが飛びでそうだぜ」というフレーズは刺さりますね。ま、他にも刺さるところはありますが。
天気●ロックは shit と fuck ですからね。退屈や違和もメインテーマだし。
憲武●ヴォーカルの坂本慎太郎が歌詞を書いてますが、「美しい」(2007年)の歌詞もクソをテーマにしてますので、なんかこう、愛着があるんでしょう。
天気●ほんとだ。全篇、クソですね。坂本慎太郎って、ギターもいいんですよね。ギブソンSGというのはわりあいめずらしいんですが、カッコいい音を出します。
憲武●ベースの亀川千代は今年の春に亡くなってます。54歳という若さでした。死因は公表されてません。このバンドは2010年に解散してるんですが、いまだに根強い人気があって最近聴き始めたという人も少なくないです。
天気●ルックスも相俟って、雰囲気のあるベースです。ここでよく取り上げるファンク系のベースとは遠い。もわっとした音がもっぱらですが、よくうねって、独特のグルーヴです。
憲武●短いブレイクのあとの、もわっとした感じのベース(2分35秒あたりの)いいですね。人はどこか狂気を孕んでいる部分があって、ゆらゆら帝国は、その狂気をエネルギーにしているという印象です。そうしたところに惹かれるんでしょうかね。僕はそこに惹かれます。
(最終回まで、あと643夜)
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