2025-01-05

2025新年詠(テキスト)

 二〇二五年新年詠 (到着順)

外に出て風に吹かれて去年今年   杉田菜穂
はかまださんのただゐるだけの花の春  有本仁政
見送りぬ新年と云ふ方舟を     田中目八
一兆の星の塵取り初宇宙     んん田ああ
オノマトペだらけの国のお正月   鈴木茂雄
あらたまの100ゴールドの蘇生かな  押見げばげば
楪や万事屋号で通る村       井原美鳥
へび年の始かつてのディスコクイーン     飯田冬眞
修繕を終へて張切る獅子頭    竹内宗一郎
吾を確と見て曳猿が犬歯剥く     藤井祐喜
年酒汲むスネークダンスは8の字に  篠崎央子
御鏡やなべて蛇体のおふでさき    九堂夜想
日本人ばかりが集ひ初日の出     杉原祐之
お日様が海より出でて新年来    宮本佳世乃
しろがねのリュウズを回す淑気かな  五島高資
初富士を客に知らせておもてなし   中矢 温
手づくりの地球旗そよぐ大旦       中村想吉
ひらくなり週刊俳句新春号        対中いずみ
天国も地獄もごまめヘビっちゃお   榊 陽子
まだのびるまだまだのびる雑煮かな 髙木小都
我を射し手つきの残る忘年会    永山智郎
頼もしき日めくりの嵩大旦      五百石
満腹が行くよ近所の初晴を     うっかり
遠景に唄う無限の青き蛇      大井恒行
恙なく昭和百年目の初日      佐藤りえ
初日記昨日の髭を撫でながら    青島玄武
プリキュアが乗つてゐるのが寶船  北大路翼
まないたの鱗ひとひらはつ昔    島田牙城
初日待つアキレス腱を伸ばしつつ  仲田陽子
超越性は雑煮じゃあないぞ諸君   赤野四羽
オリオンのベルトへと子持ち勾玉  上野葉月
赤服を脱いで翁の寝正月       火山晴陽
かわりばえへびのわき腹くすぐって  湊 圭伍
初読に汝が名を探すちやんとある    西生ゆかり
新年やツクバネの木に実ののこり     羽田野令
蒼鷹や二千年後の福音書         宇井十間
波が波めくり上げたりお正月       千野千佳
物干しに三枚二日過ぎにけり       広渡敬雄
福笹を背負へば勇敢なこども       鈴木総史
初日の出ポケットの中欠けたボタン     小津夜景
元日の星ちよつと見え我が家見え   村越 敦
みしみしとみちなるみちをみつける春 赤羽根めぐみ
お年玉飛ぶ清水の舞台より         大野泰雄
顔隠しスタンプ御慶写真かな       西川火尖
練り菓子の蛇の真白き淑気かな    金子 敦
しゅるると新春響く耳の奥      衛藤夏子
ウイルスもゐてエアロゾル去年今年      マイマイ
酔つて出て西の茜や老の春     岡田一実
御節は冷凍蛇は冬眠中       雪我狂流
長距離ランナーみな同じ顔して   中内火星 
ぐろとぐろりあらたまらるれとぐろるる     山田耕司
遺伝子をゲノム編集年あらた   直井あまね
理不尽なもの理不尽なこと初湯   瀬戸正洋
りすさんの太い尻尾に差す初日   松尾隆信
読初は『小さいお家』といふ絵本  松尾清隆
読初は第六巻の三国志       松尾和希
ごぼうの入ったお餅食べたらママの爪だと思っちゃった    松尾千秋
ママと言ふ娘の寝言初夢も         矢野玲奈
なまはげのおそらく道を見失ひ       野城知里
初晴や畝間の鳩首を振る       藤田 俊
国家より天下大切五万米噛む       山口昭男
食卓に父と数の子いなくなる       紀本直美
新しき年あたらしき傷負うて      笹木くろえ
初凪や運河のいたりつくところ       谷口智行
初鳩が窓覗き込む良き天気     クズウジュンイチ
半襟のしゅるしゅるしゅると干支の声    竹井紫乙
二日はや上野に物見高き人         内村恭子
木登りの生脚垂るゝお元日      浅沼 璞
死を知らぬ太陽の燦去年今年        曾根 毅
前へ向くちよろと舌出す去年今年     隠岐灌木
蘇る拓の力や初山河           田中泥炭
火の番の入れ替わりたる淑気かな     岡村知昭
スクラムのふたり羊日もなかよし     小川楓子
スクラムの回りてほどけ二日かな    松本てふこ
すれちがふ破魔矢の鈴とタマの鈴     小川軽舟
曳かれたる猿の頬より紐赤し      村上瑠璃甫
二日酒定番なりし上すき焼き        森 青萄
初売りのみっちりと寿司並べられ     久留島元
輪飾の立派な家や闇バイト      林 雅樹
白雲のまじり気のなき旅始         桐山太志
遥かより声聞こえくる初鏡        月野ぽぽな
二日はやほの三日月に旅の曽良    高梨 章
一画は里人の墓地初日溜む         大西主計
初日記のひかりに父の忌を記す       土井探花
初詣うらはらに雲見ておりぬ      内橋可奈子
奇貨おいて初旅とする日なりけり   金成 愛
蛇の美のずるくねじれてゆく光       八上桐子
輪飾に日を享け漁船出航す        しなだしん
包装のままにオフィスの鏡餅      青木ともじ
ファミレスの天使さざめく五日かな     ばんかおり
年男来たれり媚薬売りその他      五十嵐秀彦
水洟の止まり吃逆、欠伸、寝息     津川絵理子
淑気満つ鍵掛けてある駅ピアノ       小林奈穂
角美しき三鬼の墓碑ぞ年酒注ぐ      津髙里永子
正月の銅鑼がたくさん鳴る中華      宮﨑莉々香
歓楽をきみへうつしにゆきたくも   岩田 奎
縫初の布に縦横ありにけり      森 瑞穂
鳥追のぞろり三味線調弦し         中嶋憲武
窓明かし窓のすべてに去年今年    わたなべじゅんこ
蓬萊の頂へ海老至らんと         田中木江
何事も無きこと嬉し三ヶ日        山本たくみ
十四時間離れ浮く葉や年の花      平野光音座
サブスクにアクション映画みる三日    望月とし江
八重歯から笑むひとと酌む年酒かな    伊藤左知子
大服や金色の澱しづみをり         千鳥由貴
白砂や結び損ねた籤の笑み      野口 裕
潮風を体に触るる去年今年      橋本 直
舌先のピアスに当たる祝箸       叶 裕
初声のこつちこつちとゐなくなる     山岸由佳
手も足も生ふやAI福笑ひ         須藤縦横
猿曳の小道具にある小槌かな      西山ゆりこ
ご近所と御慶交すや不燃ごみ      斎藤悦子
初旅の直立歩行の手は膝に         井上雪子
初夢の君俯いてゐたりけり         西村麒麟
餅腹が胃液の海を漂へり       ハードエッジ
御降りの雲展びきたる湖国かな    日原 傳
皆がB'zの話している画面に雪   酒井 匠
宝船二百海里を越えにけり        有瀬こうこ
千両の実こぼれ胸のつかえ取れ      瀬戸優理子
あんとして迎えし春やまんまんちゃん     琳譜
稲積むや枯野の夢を手なづけに     神保と志ゆき
日の丸におもてうらなし初御空       瀬間陽子
金の尾鰭振りて潜るや初夢に       小田島渚
一月一日一条の先に船           川嶋一美
ムンバイも起き出してきて初電話    小林かんな
金星へ月の囁く三日かな         柏柳明子
門松が自動扉の内側に         近 恵
門灯の心もとなき松飾        常原 拓
地獄から羽子の返つてきたところ     加藤右馬
鋲に留む去年と今年の交差点       堀田季何
たましひの気ままに飛べば冬の空     依光正樹
福沸沸かすに白き焔かな         依光陽子
ファミレスの入口付近淑気充つ       亀山鯖男
初芝居兄慶んでゆきにけり         新倉村蛙
初夢を言はせて風の九段下         郡司和斗
元日のおほかた雪に暮れにけり       斉藤志歩
裏白のめくれが腕の攣る具合        鴇田智哉
今年とふ愛(は)しき言葉や今年こそ     垂水文弥
達磨売だんだん座る場所ができ       辻村栗栖
月夜よ岸より憑依の手毬唄        鳥居真里子
けつたくそわるい客くる絵双六       中山奈々
初春や猫もしっぽをぴんと立て       穂積一平
箸でいく小さな伊勢海老のグラタン    田中惣一郎
新年やテトラポッドに魘されて       水城鉄茶
読初やこぞひととせは孤独ならず     関灯之介
アナウンス三ケ国語や初電車       松野苑子
ペン先よりあらたまの文字流れ出す     鈴木牛後
元日の青き空のみ見ゆる窓      矢口 晃
歯固や老父根つから蛸好む        津久井健之
病臥して淑気観測器となりぬ     関 悦史
ぴよぴよと鳴る靴の子も初詣       倉田有希
たましいと初明かり青はほころぶ   妹尾 凛
指切りに蛇の瞬きひめはじめ       楠本奇蹄
嗅いでから選る珈琲の福袋         黒岩徳将
新しき右肩の骨初明り           柴田千晶
お降りのつづきは手のひらの眠気     渡戸 舫
初夢を醒めて寝癖のすさまじく    西原天気
初鴉風上に向き助走せり         岡田由季
聞き慣れぬ言葉行き交ひ初詣        村田 篠
幸先は餅を忙しく裏返す         福田若之
口に歯の生えてゐる餅景色かな    上田信治










0 comments: