〔ビール俳句〕
瓶ビールではなく缶ビール
★BAEREN/レモンラードラー/ラードラー/アルコール度数2.5%
岸田祐子
缶ビール飲む大寺のその一間 波多野爽波
豪徳寺の受付のある建物は、奥に座敷があって、窓から中が少し見えた。喪服姿の人が集まって、会食していたことがあったので、この句はそういうときのビールかなと思った。でも、葬儀や法事の時に出てくるビールは瓶のことが多い。少なくとも、私が参列したことのある法事で缶ビールがあったことはなく、ビールどころかジュースやウーロン茶も瓶だった。
もう一つ、「その一間」という言葉にどことなく広々とした余白があって、人が大勢いるような感じがしない。葬儀や法事でないのなら、習い事など趣味の何かだろうか。ヨガ教室を寺のスペースで開催するというのはよく聞くし、句会が開かれることもある。
句歴が長くなるにつれ、お酒を飲みながらの句会に驚かなくなった。なにしろ、実際に会ったことのある俳人のほとんどがお酒好きで、句会の後はだいたい飲み会となる。もちろん、飲まない人もいるけれど、体感的な割合は9対1くらいで、飲まない人の方が少ないし、飲みながら作句するという人も知っている。
早めに会場に来て、飲みながら俳句を考えるならば、レモンラードラーが軽やかだ。「ラードラー」とは「自転車乗り」を意味するドイツ語で、ビールをレモネードで割った飲み物。夏のドイツで飲まれたのが始まりと聞く。障子や襖を開け放し、草木を眺めて飲む味は、ときどき通る涼しい風だ。酔っ払っていなくても、寝転がってしまいたい。
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