〔ビール俳句〕
らしさ
★Stone Brewing/Stone IPA/WEST COAST STYLE IPA/アルコール度数6.9%
岸田祐子
俳句のコミュニティの中で「ビールも好き」ではなく「ビールが好き」という人との出会いは意外と少ない。私は「ビールが好き」なので、選べるならビールを飲む。そして、美味しいビールを飲んだ時、そのことを誰かと共有したくなる。
ビールなら頂くワイン駄目だけど 山田弘子
この句を見つけた時に、「えーっ、弘子さんってビール党だったの!?」という驚きがあった。一度もお会いすることはできなかったが、ホトトギスの先輩で、私が伝統俳句協会の新人賞をとった時の審査員。ちょっと厳しめな批評だった。できたら、ビールの話をしてみたかった。もちろん、「ビールなら頂く」と言っている人物が、作者であるとは限らない。ただ、山田弘子がビール党だったらとても嬉しい。
日本の一般的なラガービールとワインの味はかなり違うけれど、ビールの中には、ワインに似た味のものもある。特に、葡萄の香りを持つ「Nelson Sauvin」というホップを使ったビールは、スタイルにもよるけれど、白ワインやシャンパンのような味わいがあって、ワイン好きの方に紹介すると喜ばれる。ただ、この句の人は「ワインは駄目」とはっきり言っている。そんな人が、飲みたいビールは、ビールらしい味のビールだろう。もちろん、ビールらしさをどこに求めるかは、人それぞれで、正解も不正解もないが、私の中の王道中の王道と言えば、Stone IPAだ。
WEST COAST STYLEのお手本とも言われているStone IPAは、1996年にアメリカのカリフォルニアで生まれたStone Brewingの設立一周年記念のビール。透き通った黄金色、華やかな柑橘と草の香り、そして鮮烈な苦みが特徴だ。このビールの登場によって今までネガティブに受け止められていたビールの苦みが、ホップのアロマやフレーバーを楽しむというポジティブなものとなった。
初めてIPAを飲んだのがいつだったのか、今となっては思い出せない。たぶん2003年ぐらいだったけれど、銘柄も味も忘れてしまった。本当の意味で、IPAに出会うのは、それからずっとあとの2010年頃。その中の一杯がStone IPAだった。IPAとはインディアン・ペール・エールの略で、ペール・エールに大量のホップを入れたもののこと。ホップの香りと苦みが非常に強いのが特徴だ。IPAの中でも、アメリカの西海岸で生まれたスタイルのことをWEST COAST STYLE IPAと言う。最初にStone IPAを飲んだ時、びっくりするほど苦かった。そして、それ以上に華やかな柑橘と駆け抜ける草の香りに射抜かれた。
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