【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
上條恒彦「都会の朝」
憲武●今週末にも関東地方の梅雨入りが発表されそうな、鬱陶しい季節となってきました。しかしながらそれを吹き飛ばすような歌声を。上條恒彦「都会の朝」。
憲武●この曲、1973年にシングル盤でリリースされています。作詞白石ありす、作曲小室等です。
天気●聴いた憶えがあるような、ないような。
憲武●上條恒彦という人、1970年でしたか71年でしたか、NHKの「ステージ101」という番組で、歌のお兄さんとして出演してたのを観たのが最初だったかと思います。
天気●「ステージ101」、観てたような気がしますが、「歌のお兄さん」にはまったく憶えがないです。
憲武●それが突然、六文銭と共演した「出発(たびだち)の歌」がポピュラーソング・フェスティバルでグランプリとなり、その翌年(1972)にはテレビドラマ「市川崑劇場木枯し紋次郎」の主題歌「だれかが風の中で」がヒットするなど、今でいうブレイクした存在となりました。
天気●「出発(たびだち)の歌」は鮮烈でした。ヒットもすいたのかな。木枯し紋次郎は観ていたので、この主題歌はよく知っています。
憲武●この「都会の朝」を初めて聴いたのは、当時(1972年頃)TBSラジオで深夜にやっていた番組「上條恒彦 歌そして友だち」の中でだったかと思います。なんかこう、歌声の躍動する響きが朝って感じしたんですよ。
天気●アレンジが深町純なんですね。Aメロのベースが、凝っているんでしょうけど、ちょっと帰命、もとい奇妙な感じ。サビはよくある感じの8ビートのラインなだけに、ここが目立ちます。
憲武●作曲の小室等も、1974年に出したライブアルバム「デッドヒート」の中で歌ってますが、雰囲気はまるで違います。どちらがいいということではなくて、好みの問題として僕は上條恒彦のヴァージョンの方が好きです。
天気●こちらのアレンジは木田高介。よりフォーク・ロックな仕上がり。歌唱の違いもあって、こちらのほうが軽さや調子の良さはある。対照的に、上條恒彦の声質は豊かで太い(悪く言えば、脂っこさがくどい)。
憲武●こういう声で歌える人って、今いませんね。
天気●今の日本のポップス、男性歌手には、甲高くて細いタイプが多いみたいで、たしかに、そうかも。よく知らないけど、ミュージカルの人で、近い感じの人がいるかも。
憲武●ああ、ミュージカル界は疎いんです。上條恒彦の歌声は力強さだけではなくて、憧れや失望や儚さもその声に感じることができます。
天気●たくさんの情報量を受け取ってますね。
憲武●ひさびさに話しましたら、聴いてみたくなりましたので、寝る前に「出発の歌」というアルバムを聴いてみようと思います。
(最終回まで、あと609夜)
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