2025-08-31

岸田祐子〔ビール俳句〕夜に向かってゆく

〔ビール俳句〕
夜に向かってゆく
★THE KERNEL/EXPORT INDIA PORTER/Porter/アルコール度数5.7%

岸田祐子


イギリスのビールの色の夕べかな  阪西敦子

イギリスのビールというと、ビターとかポーター、ブラウンエールなど、ちょっと濃い色のエールビールを思いだす。ビールには、上面発酵、下面発酵、自然発酵の3種類があって、エールスタイルは、上面発酵。発酵が進むと酵母が麦汁の上に浮かんでくるもののことだ。下面発酵は発酵が進むと酵母が下に沈殿するもので、こちらがラガー。自然発酵は、培養されていない酵母を使っているもののことで、現代ではあまり主流ではない作り方だが、ベルギーのランビックという酸っぱいビールなどが有名だ。

歴史的に見るとラガーはエールより新しいビールで、始まりは中世。19世紀以降、世界的に主流となった。日本の大手ビール会社のビールもほとんどがラガービールだ。これは、ラガービールの発酵温度がエールより低く、雑菌が繁殖しにくく大量生産に向いていたため。ただ、ラガーが主流となってからも、ベルギーやイギリスではエールビールが好まれたと聞く。それが本当なのかどうか、調べられていないのだけど、そういわれてみるとイギリスのラガービールを飲んだ記憶はない。

2009年にイギリスはロンドンに設立された THE KERNEL が醸造する EXPORT INDIA PORTER は、こっくりとした黒に近い濃い茶色で夜に向かってゆく味だ。1850年代のインドに輸出していたポーターにインスピレーションを受けて作られたというが、当時のレシピと違うのは現代的なホップを使っているところ。このバッチに使われているホップの MOSAIC と SABRO は、草いきれとまでは言わないが昼間の草を思いだす。


※シリーズ〔ビール俳句〕は今回でいったん終了です。まだまだ暑いですけどね。(西原天気・記)

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