【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
黛ジュン「土曜の夜何かが起きる」
憲武●えー、今回は土曜日の歌ですね。洋の東西を問わず土曜日をテーマにした曲って、わりとあると思います。
天気●映画『サタデー・ナイト・フィーバー』(1977)の主題歌はもともとビージーズ「You Should Be Dancing」(1976)ですが、映画名で曲を覚えてる。とか、シカゴの「Saturday In The Park」(1972)とか。あと、シュガーベイブの「Down Town」(1999)唄いだしあたりの歌詞の「土曜日の夜はにぎやか♪」とか、挙げるとキリがないでしょうね。
憲武●あと、斉藤由貴の「土曜日のタマネギ」、ベイシティ・ローラーズの「Saturday Night」、ピンキーとキラーズの「土曜日はいちばん」。ほんとですね。どんどん出てきます。週休二日制導入以前は、週に一回しか休日がなかったものですから、そのワクワク感や解放感が土曜日にはあったと再確認した次第です。黛ジュンで「土曜の夜何かが起きる」。
憲武●リリースは1969年で、作詞なかにし礼、作曲鈴木邦彦です。以前に743号で同じ黛ジュンの「天使の誘惑」が取り上げられましたが、こちらは1968年リリースで、作詞作曲のコンビは同じですね。
天気●当時の歌謡曲は3つがセットになってたケースが多いようですね。山口百恵・千家和也・都倉俊一とか。
憲武●山口百恵・阿木燿子・宇崎竜童というセットもあります。この曲、冒頭からベースの音に引き込まれてしまいます。それが基調となって、歌が乗ってくるという感じですね。ベース、サックス、ストリングスと耳に入ってきます。
天気●シンプルなコード進行。キー(Ⅰ)のコードとⅣ度を繰り返し、サビはⅣ度とⅤ度の繰り返し。ベースラインもいたってシンプル。たしかに、ここが土台で、麻薬的。そこにラッパやストリングスが乗っかる。「ビート歌謡」(!)の基本ですね。
憲武●この頃はステージでもテレビでも、原信夫とシャープス&フラッツ、宮間利之とニューハード、小野満とスイングビーバーズ、ダン池田とニューブリードなどのビッグバンドが歌手とセットになってましたので、楽器編成が同じで、どの歌手の歌を聴いても、演奏は同じように聞こえたりしてました。
天気●ナマのビッグバンドの音で唄う番組、多かったように憶えています。レコードを流して、いわゆる「口パク」も多かったんでしょうが……。曖昧な記憶です。
憲武●ありましたね。当時は当て振りと言ってたような気がします。特にストリングスの音色は、今回のGS歌謡というようなジャンルでも、他の楽曲と同じように聞こえてます。そこに少し違和感を覚えます。
天気●ナマだと、そんなに違わない音色になりますよね。極端に言えば、交響曲の弦楽器部分の簡易型みたいな。
憲武●うーん、そうですね。「天使の誘惑」が1968年の夏で、「土曜の夜何かが起きる」が1969年12月リリースなので冬な訳ですが、いわゆる「あの冬」感はないですね。しかしながら記憶に残るリズムと歌声で、一聴「あの頃」が、ぱーっと浮かび上がってきます。なぜ記憶に残るのか。不思議です。
(最終回まで、あと591夜)
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