【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
ブレッド&バター「ピンク・シャドウ」
憲武●昼間に暖かったりすると、屋外で食べるのも美味しいそんな季節ですね。屋外で食べるといえば、思い出すジャケットがブレッド&バターの「バーベキュー」というアルバムです。今日はこちらから「ピンク・シャドウ」です。
憲武●ブレッド&バターは岩沢幸矢、岩沢二弓という兄弟のバンドです。アルバム「バーベキュー」は1974年リリースで、バックに細野晴臣、鈴木茂、林立夫、小原礼、新井潤子(現・山本潤子)などが参加してます。
天気●軽やかで、いかにもキャラメル・ママ/ティン・パン・アレーの音という感じです。
憲武●細野晴臣から林立夫までがキャラメル・ママ/ティン・パン・アレーですね。ブレッド&バターはフォークという枠組で売り出されたバンドですけど、この曲はどちらかといえばソウルの香りがします。だから山下達郎がカヴァーしたのかもしれませんが。センスの良さを感じる曲です。
天気●出だしがちょっとノーザン・ソウルっぽい。
憲武●はい。すこし華やかさがあります。この曲、山下達郎の「IT'S A POPPIN' TIME」というライブ・アルバムで最初聴いて、ずっと山下達郎の曲だとばかり思ってたんです。でも山下達郎の曲っぽくないので、ずっと違和感があった曲です。そういうことってありますよね。「今はもうだれも」という曲がアリスの曲ではなくて、カヴァーだったとか。
天気●へえ、カヴァーなんですか。アリスのヒット曲ですよね。
憲武●そうなんです。原曲は関西フォークのウッディ・ウーというグループが1969年にリリースしてます。「今はもうだれも」って、ずっとアリスの曲っぽくないと思ってたんです。そしたらカヴァーだったという。社会に出てから、友人のカーステレオでブレッド&バターの「ピンク・シャドウ」がかかって、「これ、達郎の曲のカヴァー?」と聞いたら「ばか、オリジナルだよ」と答えられて、そこで初めてブレッド&バターの曲だと知った訳です。
天気●「ばか」はないと思うけど。
憲武●はい、「ばか」はすこし心外です。やはりオリジナルを聴いてしまうと、これはこちらの方がいいと思います。逆にカヴァーの方が全然よかったりする場合もありますし、その線引きの境界線って、恣意的で難しいものがありますね。
憲武●ぼくは石川ひとみの方が断然よかったりするわけですが。とまあ、紅茶ひと口にふと深い味のする秋は、そんなことを考えてしまうものです。
(最終回まで、あと589夜)
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