【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
水咲加奈「Come Together」
天気●今回は「teenage engineering OP-1 field」という携帯シンセを使って野外でトラックを仕上げるという趣向。ビートルズのカヴァーです。
天気●ラーメンを啜る音のサンプリングから始まって、ベース、ギター、ドラムの各パートを順に仕上げていく過程が見られて、愉しい。
憲武●はい、その瞬間に立ち会えるわけですね。動画で。初めてこの人知りましたが、愉楽を感じます。ラーメン食べたい!
天気●それにしても、このちっこいシンセ、まず筐体のデザインがかわいい。インターフェースの液晶画面にいろんな絵が出てきて、さらにかわいい。かわいい好きの人は持ちたくなるよなあ、というシロモノです。値段は13万円くらいみたいで、これが高いのか安いのか。使い倒せたら、とても安い。
憲武●いつの間にこのようなシンセが出ていたんでしょうね。情報に追いつけない時代ではあります。
天気●楽器屋さんじゃないので、当然です。楽器屋さんでもきっと無理。さて、この、ラーメン音。オリジナルではジョン・レノンの「シュッ!」っていう掛け声(?)部分。まあ、ここを何の音にするかが、このレコーディングの肝なんでしょう。
憲武●その「シュッ!」ですが、最近ネットで「あれはShoot meと言ってるんだ」みたいなコメントを見かけたりしますが、ホントでしょうか。学生時代の友人がアメリカに行って、「shit!」というスラングを聞いたとき、「シュット」に聞こえたと言っていたので、発音の地方差みたいなものもあるかもしれませんが、ぼくは「shit!」と理解してました。原曲も「Shoot me」には聞こえません。
天気●ライブでも、そうは聞こえません(イントロ直後の第一声は、そう聞こえなくもない)。この手の都市伝説(?)、ビートルズには他にもありましたよね。ポール死亡説にまつわるもろもろとか。音だけ聴いてるってことができない人が多いみたいです。いろいろ物語が必要なのは、人間の性(さが)ですが。
憲武●伝説、逸話、説話、神話などいろいろ纏わせたいんですね。
天気●この人、ほかにもビートルズの曲を何曲か、同様の「field recording」をやっていて、雑踏の音を使ったり、自販機の音を使ったり。愉しそうです。
憲武●何曲か聴いてみましたけど、面白いですね。ヴォーカルがどれもいい具合に力抜けてていいです。
天気●大掛かりな音楽の一方で、一人遊びとしての音楽の愉しみ。これまでも何度か取り上げてきました。このところAIがうまいこと曲もトラックも作ってしまう傾向がますます加速していますが、どこまで行っても、こういう「一人遊び」が残るんだろうと思います。
(最終回まで、あと586夜)
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