2026-02-01

深悼・茨木和生先生 しぐれ 谷口智行


 

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深悼・茨木和生先生


しぐれ       谷口智行
 
和生逝く夜目にも白き冬の霧
闇深うして年の瀬の矢田丘陵

午後九時三十分、平群町「家族葬ひかりの森」に到着
しぐれきてひかりの森に師いませり
声立てずひかりの森の寒雀
約束のやうにこの日の小夜時雨
冬の灯に師のかんばせの美しき
もの言はぬ先生と聴くしぐれかな
クリスマスイブ先生の一語欲し
此の世にも彼の世にもクリスマスソング
金色の漁火一つクリスマス
吹けば消えさうな烏賊釣火の消えず
風花を長靴履いて逝きたまふ
海山のこゑはすれども和生亡し
火のごとくかの冬帝も泣きをらむ
朴落葉一ころげしてしづまりぬ
枯畦をめぐる「運河」を丸め持ち

先生は(三句)
はらわたが好きで奈良漬大好きで
ゐのししを食ぶ前の世も後の世も
いかほどの猪熊鹿を召されし

口笛を吹きて上れり月の山 和生(「運河」令和六年九月号)の句があれば、
先生の口笛聞こゆ冬の月
天狼や路地に和生のけはひして
海の砂すくひてこぼす小晦日
先生先生風邪など引いてくれますな
年の瀨の漁火なれば豪勢に
冬浜に流木立てて墓標とす
 

『運河』令和八年二月号より転載 

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