【句集を読む】
小休止
小林鮎美『女王蟻』の一句
西原天気
ところてん根気はないが職はある 小林鮎美
このかんじ、ひとことでどう言えばいいのだろう? 「根気はあるが職がない」なら、「とほほ」とでも表現できそうだが、「逆とほほ」と言うわけにも行かない。「ノンシャラン」と戦前(?)の流行語も遠くはない気がするが、もっといい語がありそうだ。
って、こんなことに腐心するのはバカげているかもしれませんが、自嘲と矜持、鬱屈と恬淡が混じり合ったこのかんじは、なにも俳句のかたちをとらずとも、ふだんから(私的な)興趣をもって眺めているので、ちょっと突き詰めたくなります。
ところで、根気の有無はともかく、職の有無はきわめて切実なのですが、「ところてん」という季語、それに始まる「俳句という物言い」は、やはり救いがあって、ちょっと気分を軽くしてくれる。
私たちの暮らしはいろいろな意味でとてもハード。で、憂鬱で、もうやってられない。最悪。ですが、俳句は、ときどき、甘味屋の座席みたいにほっとさせてくれる。
集中、掲句のほかに数句、働く人の句を中心に。
地下鉄の風の強さよ入社式 小林鮎美(以下同)
終戦の日の抽斗の朱肉かな
パソコンの中にごみ箱黄砂降る
ストールや切手を買いにゆく仕事
もう一句、おまけ。かなり好きな句。
原作と違って虹が出てしまう
小林鮎美句集『女王蟻』2026年7月/ふらんす堂
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