2026-09-13

西原天気【句集を読む】小休止 小林鮎美『女王蟻』の一句

【句集を読む】
小休止
小林鮎美女王蟻』の一句

西原天気


ところてん根気はないが職はある  小林鮎美

このかんじ、ひとことでどう言えばいいのだろう? 「根気はあるが職がない」なら、「とほほ」とでも表現できそうだが、「逆とほほ」と言うわけにも行かない。「ノンシャラン」と戦前(?)の流行語も遠くはない気がするが、もっといい語がありそうだ。

って、こんなことに腐心するのはバカげているかもしれませんが、自嘲と矜持、鬱屈と恬淡が混じり合ったこのかんじは、なにも俳句のかたちをとらずとも、ふだんから(私的な)興趣をもって眺めているので、ちょっと突き詰めたくなります。

ところで、根気の有無はともかく、職の有無はきわめて切実なのですが、「ところてん」という季語、それに始まる「俳句という物言い」は、やはり救いがあって、ちょっと気分を軽くしてくれる。

私たちの暮らしはいろいろな意味でとてもハード。で、憂鬱で、もうやってられない。最悪。ですが、俳句は、ときどき、甘味屋の座席みたいにほっとさせてくれる。

集中、掲句のほかに数句、働く人の句を中心に。

地下鉄の風の強さよ入社式 小林鮎美(以下同)

終戦の日の抽斗の朱肉かな

パソコンの中にごみ箱黄砂降る

ストールや切手を買いにゆく仕事

もう一句、おまけ。かなり好きな句。

原作と違って虹が出てしまう


小林鮎美句集『女王蟻』2026年7月/ふらんす堂

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