2026-10-04

三鬼賞本気ハッ句〔後編〕稲葉航 川北聡司 西園寺Q太郎 沼野晴人

三鬼賞本気ハッ句〔後編〕

稲葉航 川北聡司 西園寺Q太郎 沼野晴人

俳句個人誌『なるほど』創刊号(2025年11月)
※転載に合わせて微修正

≫承前:三鬼賞本気ハッ句〔前編〕


―西東三鬼(一九〇〇~一九六二)の生まれた岡山県津山市が主催する西東三鬼賞。二〇二五年で第三十三回を迎える歴史ある俳句賞である。今宵俳句を愛する四人(稲葉航、川北聡司、西園寺Q太郎、沼野晴人)が集まった。第一夜では、大賞受賞時の五十万円獲得時の山分けを決め、第二夜には三鬼の自句自解百句を使って句会を行い、三鬼の句の傾向を彼らなりに纏めた。第三夜ではいよいよ三鬼賞の傾向を掴もうとする。―

◆第三夜(二〇二五年某月某日)

沼●今宵もお集まりいただき、ありがとうございます。第二夜では三鬼の俳句のキーワードを次のように纏めましたね。
・距離感
・擬人化
・過剰
・詩的真実
・フェティシズム
・ポエジー
・ジブリ

Q●ジブリが一番、三鬼を言い得ていますね。三鬼に駿を見出せたのは凄い。
沼●気になる人は「なるほど」創刊号を読んでくださいね。
川●今メタ発言した?!
一同●(笑)
沼●さて、ここからはいよいよ三鬼賞受賞作の傾向を研究しましょう。ホームページに過去作品が掲載されているので、見てみましょうか。傾向について気が付いたことがある人はいますか。私は結構一人称視点の人間が出て来る句が多いのかなと思いました。
川●時事句でしょうか。たとえば第二十八回(二〇一八年)の大賞は

マスクしてしづかな国となりにけり 松田佳子

Q●なるほどね。
沼●それでいうと今年は戦後八十年。戦争詠が来ると思います。
稲●傾向だからといって、戦争を詠むのは違うのではないでしょうか。
沼●それは仰るとおりなんだけれど、私はやってみようと思います。普段詠まないのですが、戦争に対して俳句を通じて向き合ってみたいです。
Q●私も詠むのは難しいかもしれないです。
川●戦火想望ではなくとも戦争を偲ぶということもできるのかもね。
沼●あとは今現在の戦争と向き合うという道もありますかね。でも無理に戦争の俳句を作らなくて勿論大丈夫です。
Q●時事といえば「日本人ファースト」かな。参政党の勢いが凄いです。
川●なるほど。「日本人ファースト」、グローバリズムと排外主義。三鬼はグローバルな人だったし。
稲●それって十七音になるかなあ。
沼●グローバルでいうと、三鬼に対してはコスモポリタンという自認・他認はありましたよね。
稲●あと、時事なのか自信がないですが第二十三回(二〇五年)の大賞は、

虫老いて国歌斉唱していたり 松井真吾

川●国歌について法で制定することについて、共産党が反対していたことってなかったっけ。調べます。……国旗及び国歌に関する法律だ。……一九九九年か。
沼●それなんでしたっけ。教職員の起立斉唱を命じたのもこのときでしたっけ。調べていいですか。……あ、全然違うな。第二十三回大会は二〇一六年で、東京都教育委員会の通称「10・23通達」は調べたところ、二〇〇三年でした。
Q●まあ、この俳句の話に戻ると、これくらいベタベタに付けて良いということですかね。人を虫(季語)と重ねるというか国家というか。
沼●他に時事っぽいのないかな。第二十四回(二〇一六年)大賞はどうかな。

美少女のひとりが男きんぽうげ 東金夢明

Q●ジェンダー的な視点からじゃね、なるほどね。
稲●女形とかそういう話かと思った。
沼●まあこの句はジェンダーを更新できていないし、良い句だとは思わなかったですね。三鬼の少年少女詠とは少し違う嫌さがあるかも……。取り上げておいて、作者には申し訳ないですが。
稲●戦後何年の節目とか関係なく戦争を詠んで、良い句もありますね。第三十回(二〇二三年)の大賞です。

 回天や海鼠を切れば水溢る 中村猛虎

Q●そうですね。関係ない句が基本的には多いんだけれど、節目の年は節目の句が選ばれやすい傾向があるのかね。
稲●うーん。ここ二三年は節目ではないけれど、戦争の句の傾向があるのかな。第三十一回(二〇二四年)の大賞もそうでした。

人は赤馬は青紙代田掻く 山崎寿仁

沼●ふむふむ。では三鬼賞の傾向として、戦争詠を挙げてみましょうか。あとは選者から考えてもみますか?
川●黒岩さん?
沼●黒岩さんは身体性、でしょうか。いや、身体性はご自身の句作時のお話でしたかね。選のゾーンも広いという印象があり、色んな句を取れる選者ですよね。
Q●選者ハック来た?!
稲 あとの御二方は、現代俳句協会副会長の久保純夫先生と第二十四回 現代俳句大賞の寺井谷子先生です。
沼●どうしよう、寡聞にして御二方の句を一句も諳んじられない……。
川●御年齢から選の傾向を紐解けるかな。
稲●うーん、久保先生は一九四九年生れで今年七十五歳になられて、寺井先生は一九四四年生れ早生まれだから今年八十一歳になられる。
Q●黒岩さんは完全に若手枠なんだね。
川●御年齢を踏まえると五句中一句は戦争を踏まえてみますか。
稲●また受賞句の傾向の話に戻るし、最近はちょっと違う傾向にあるけれど、何となく「再定義」が一つ言えるかもしれません。第十三回(二〇〇五年)と第十四回の(二〇〇六年)それぞれの大賞です。

吾と言う構造物に春一番 秋山青松
脳と言う宇宙の終わり麦の秋 柏木晃

Q●再定義による見立ての提示、なるほどです。書いてある意味に納得感があるということか。
川●ちょっと古い秀句性を感じますね。……というか、結構知っている俳人が歴代の大賞・秀逸にいらっしゃいますね。
稲●今井豊さん(第十二回大賞)。
沼●横井来季さん(第二十六回秀逸)。
Q●御中虫さん(第十九回秀逸)。
沼●曾根毅さん(第十一回秀逸)もいるし、関悦史さん(第十三回秀逸)もいらっしゃる。極めつけは大賞(第七回)を獲ってからも出して、複数回秀逸(第八回、第九回、第十回、第十四回)を受賞しているのは高橋修宏さん。凄すぎますね。
Q●季語は入れた方が良さそうかしらね。
川●有季定型?
沼●いや、定型ではなくても大丈夫そう。季語は応募締切が十月末だからか、夏秋の句が多いですかね。
川●敢えて冬の句にしたら、新鮮さが出せるかも。
沼●たしかに。あと、旧仮名と現仮名の問題はどうでしょう。
稲●現仮名も結構あるような。
川●旧仮名も結構あるから、どちらでも良さそう。
沼●一人五句まで応募できるので、一句中で統一さえできていれば、五句全てを片方の表記に揃えなくても良いかもですね。うーん、どうなんだろう。結局沢山作って、三鬼賞らしいのを後から選んだ方が早いですかね。
Q●漠然と句作するより、三鬼賞を狙って句作したいなあ。
稲●沢山作っても三鬼賞らしい句はないかもしれないです。あとこれは失礼過ぎる発言ですが、狙って作れそうだと思った句もありました。第二十九回(二〇二一年)の大賞です。

転生のたびに手袋落とすなり 荒井大輔

沼●やっぱりスケールの大きい句が良いかもしれないですね。ここまでの三鬼賞の傾向を纏めると、こんな感じでしょうか。
・距離感(スケールの大きさ)
・擬人化(人が特に一人称で出て来る)
・時事句(特に戦争)
・再定義
・有季(定型)
川●……三鬼賞というより、単純に巧い俳句の話になってきましたね。
沼●この傾向からどうやって俳句にしたらいいかなあ。
Q●最近はAIですぐにできるから、してみましょうか。
川●五人目としてChat GPTに俳句作らせて、応募しますか。
一同●(笑)
川●「距離感」があって、「擬人化」をしていて、「時事的」で、「再定義」をした「有季」の俳句の全部盛り合わせは難しいかもだけれど。
Q●一つ目の「距離感」って多分、でかいテーマを小さい日常的なものに着地させて生まれているところがあるよね。
稲●卑近なテーマに大きなテーマが潜んでいるんですね。
沼●先ほどの、道に落ちている手袋の句とか正にこれかも。
稲●あと、Chat GPTって音数とかも数えられるんですか?
川●最近賢いからできますよ。
Q●早速やらせてみました。

一匹の銀河を掴む蟻の列 Chat GPT

一同●(爆笑)
Q●ほかには、

空蟬の内部は全て仮説です Chat GPT
人類の欠伸のごとき流れ星 Chat GPT

稲●分かるな。
川●私も作らせました。

眠りつつ戦艦ひとつ雲の下 Chat GPT
口笛を吹きつつ惑星ずらす人 Chat GPT

沼●何だかノリでここまで来てしまったので、第三夜の流れを一旦整理させてください。
三鬼賞で大賞を獲りたい。
→三鬼賞の傾向と対策を立てよう。
→傾向は見えて来たけど、要素を意識的に詰め込んだ一句を作るのは難しそう。
→AIに作らせてみよう。
こんな感じでしょうか。AI作ってありなのかなあ。
Q●問い合わせると、駄目という返答になりそうですね。
沼●ちなみに大会ホームページの注意事項は次のとおりです。
・入賞作品の一切の権利は西東三鬼賞委員会に帰属します。
・応募作品は、全て未発表作品・自作品をご応募ください。
・二重投稿(同じ俳句を他のコンテスト等に同時に応募する行為)は固くお断りしています。
・選考後、類似句・盗作等が判明した場合は、入選および掲載を取り消すことがあります。
一切の権利は委員会に帰属するんですね。
川●どうなんでしょう。規約に書いてないグレーなところを突いてこそ問題提起になるのではないでしょうか。
Q●確かに。もし何かあったら、「本当は全部私が作りました」って言おうかな(?)。
沼●別の公募の賞ですが、堀田季何さんが選者を務めた「GMOサイン・サステナブル俳句大賞」には、「※作成過程でAI技術を利用した作品も応募可、ただし、必ず応募者自身
身の独自性・創作性を加える必要あり」とありますね。
川●AIの使用の有無って、主催者は知りようのないことではありますよね。小説でもAIを利用したものが話題を呼んだり受賞したりする傾向もあるわけで、この問題提起も面白そうですけどね。
沼●とにかく賞金がほしい我々にとって一番のバッドケースは、「なるほど」の読者が主催者に通報して、主催者が事態を重く見て、大賞の五十万円が没収されてしまうこと……でしょうか。
川●そうしたら裁判しましょう。
Q●私はその展開、アツいと思います。俳句史に残る。
沼●もしそうなったら、賞金を使って裁判しましょうか。何だか思いがけない方向に話が広がりましたね。このまま付いてきてくれますか。
一同●はい!
Q●そのためにも大賞を獲らないと。
川●該当するとしたら、「類似句、盗作等が判明した場合は~」なのかな。もし取り消されたらむしろこっちから提訴したい。
Q●定型の俳句って、もう全部「全俳句データベース」に書かれちゃったしね。論点違いますけれど。
川●それは詭弁だけれど(笑)。実際、AIによる盗作って判定が厳しくなるんでしょうか。
沼●私は法律に明るくないので恐縮ですが、AIに意図的に書かせているので、人間が作ってうっかり似てしまった過失よりも罪は重そうですよね。
川●AIが傾向を踏まえるのと、私たちが踏まえるのって何が違うんでしょう。
Q●なるほどね。賞金没収、やっぱりアツくないですか。
沼●アツいですね。でもめっちゃ怖いです。……はい、ということで、沢山作ると良いのではという意見と、AIの句作って気になるよねという意見をかけあわせて、次は多めの十一句出しの三鬼賞応募句選定句会をしましょう。十一句中一句以上はAIの力を借りてみてください。
Q●句会含め、応募までどんな流れになりますか。
沼●皆さんからの出句が完了したら、選句に移ります。特選(=最も大賞(賞金五十万円)を獲れそう)一句、並選(=大賞には及ばずとも秀逸(賞金二万円)を獲れそう)六句、AIで作っていそうな三句を選んでください。なお、AI予想句と特選・並選は重複して構いません。
稲●好きな句ではなくて、獲れそうな句なのが、普段の句会と異なりますね。
沼●そうですね。点盛までは沼野の方で集計しておきます。あと今回は大賞を誰かが獲るのが目的なので、推敲案も積極的に句会中にコメントしてください。句会後には応募予定の五句を暫定でも良いので選定しましょう。締切までに入れ替えの希望があれば、教えてください。それでは本日はありがとうございました。
一同●ありがとうございました!

◆第四夜(二〇二五年某月某日)

沼●こんばんは。本日もありがとうございます。皆さまの句作と点盛の完了した句一覧を持ってきました。





川●あれ、沼野さんの特選が漏れているかもしれません。
沼●よくぞお気づきで。私は今回特選ナシです。……あの、皆さん、自戒を込めてお伝えさせていただきますが、この句群のなかに大賞を獲れる句とお思いですか?!(笑)
一同●(笑)
沼●これから句会をして、応募句五句を暫定で決めていただくのですが、そのなかから最弱の一句も決めていただいて、締切までに最低一句は入れ替えをしていただきたいです。
Q●なんだってー。まあでもたしかに選がばらけているのもあって、圧倒的に大賞を期待するというのは難しいのかも。
沼●まだ皆もっともっとできるはず!それでは一句目、川北さんの特選です。お願いします。

1 天上の針の落ちなば夕立かな 川(特)

川●スケールの大きい句で、三鬼賞の傾向を抑えていると思いました。「天上の針」という空想が「夕立」として現前に現れていて、「なば」という古風な言い方で、未然形なのでこの夕立は想像の夕立で、一層スケールが大きいと思いました。
沼●ありがとうございます。続いてQ太郎さんの並選です。

4 流れ星すこしだけ硬貨のにほふ Q(並)

Q●スケールの大きい句を中心に選をしたら、三鬼賞らしいのかなと思って選をしてみました。
一同●(笑)
Q●小銭を持って自販機に買いに行って、ポケットのなかでチャラチャラ音が鳴る感じ。特に十円玉は銅の匂いがしそう。そしてそこにキラッと流れ星が光る。共感を呼びつつ、やりすぎていない既視感があると思いました。
沼●「すこしだけ」が流れ星と匂うのどちらにかかるのか悩んだんですよね。でも程度を示す言葉を入れるかどうかには慎重になった方が良いかもしれない。でも良い句だなあ。続いて五番、稲葉さんの並選です。

5 来路花を買うて八十年歩く 稲(並)

川●これで「サルビア」って読むのか!初めて知った。
沼●確かに難読だ。傍題の「緋衣草」だと読みが「ひごろもそう」になるので、カタカナが無難かもしれません。
稲 戦後系の句を中心に選をしました。サルビアは向日葵ほどべたついてないし、でもさっぱりしている訳でもなく、ちょうど良い花だと思いました。読み筋が広いようで一意に定まる句が受賞すると思い、こういうストレートな句を選びました。
?●ピィピィ。
沼●あれ、稲葉さん、よく見たら肩に小鳥が!
稲●あ、この子は家のピーちゃんです。お喋りですみません。
沼●小鳥なんですね、可愛い。続いてQ太郎さんの特選です。

6 夜長とは触れてはならぬものばかり Q(特)

Q●この世のものは基本的に勝手に触ってはいけないのだけれど、夜だと勝手に触ると一層ダメな感じがもっとする。物質だけの話ではなく、心とかあの世とか触れてはいけないものが現れている感じがする。夜長は少し神秘的。
沼●「とは」が説明っぽいような……?
Q●「長き夜の触れては~」とかも考えたけれど「とは」くらい強く言って、名言っぽさを出すのも良さだと思う。
稲●たしかに三鬼賞っぽい。
沼●だんだん良い句のような気がしてきました。すみません。
川●お、採用ですか。
沼●採用かも。続いて七番、Q太郎さんの並選です。

7 無人レジ通りて我も無人なる Q(並)

Q●三鬼本人が今も生きていたら、作りそうな句。無季なのも良い。無人レジを通っても我は我のはずのなのに、そこを無人だと言い切ってしまう。
沼●無季の句に受賞作がないので、応募は怖いんですよね。
稲●第二十二回(二〇一四年)の大賞はかなり夏っぽいですが無季でしょうか。

青き川祖国に流れ足の裏 淺井愼平

沼●下五で実感に引き寄せていますね。無季も良ければ良いのか……?でも季感がやっぱりある句なのかな。
Q●無人レジの句は季感はないですよね、無味無臭。
沼●続いて沼野とQ太郎さんの並選です。

10  八月十五日自撮りがすこし良い 沼(並)・Q(並)

Q●はい。戦争系はやっぱり今年何句か応募した方が良いと思っていて、この句は現代のあるあるがありますよね。自撮りが少し良いっていう自意識というか、映りよく盛れたなと思った日がたまたま八月十五日だったという。ほのかに不謹慎な感じというかね。本来日付って別に意味があるものではなくて、生活を営む上での便宜上の記号というか、目印に過ぎないもので、それに意味が付与されているっていうことを逆説的に証明していて、批評性も高くていけそうな気がしましたね。でも少し句が若すぎるから、審査員から推してもらえるか少し自信がないですね。良い句だけど大賞は獲れないだろうということを込めて並選にしました。
沼●私もこの句は良い句だけれど、大賞は難しいのかなと思って並選にしました。終戦と写真って、戦没者の遺影とかも思わせて、遺影と現代の気軽に撮る自撮りがオーバーラップする感じもとても良いと思いました。現代の若者のひとりとして、終戦日に対するこの温度感に、不謹慎ながらもやや共感しました。
Q●秀逸に入ったら二万円だから、投句料の元手(一組二千円×四人で計八千円)は取り返せますね。
沼●大変助かります(笑)。続いてQ太郎さんの並選です。

14 天上は空蝉に似てあたたかい Q(並)

Q●そんなに深い選評がある訳ではなくて、スケールの大きい句で、「天上」という大きいものが、空蟬に似てあったかくて、その発想の豊かさを審査員が褒めてくれるのではないかと。
川●三鬼賞を舐めすぎ(笑)!この句は発想の新しさと、型のきっちりした感じがミスマッチかも……?
沼●前回の傾向で、「再定義」があったからその句かもしれないですね。あと「蝉」は「蟬」の正字表記の方が良いかも。
Q●写生の句がばーっと並ぶなかでこういう抜けた句は残るから、大賞は難しくても秀逸になりそうと思いました。
川●でもちょっと弱いんじゃないかなあ。
沼●続いて、稲葉さんとQ太郎さんの並選です。

15 銃を買ふべからず汗の納税に 稲(並)・Q(並)

稲●読んでそのままなので言うことがあまりないのですが、出だしでインパクトがあって良いのかなと思いました。納税で生活もあって、一句くらい秀逸に行くのではと思いました。
川●はい、選んでから気が付いたのですが、納税そのものには反対しておらず従順だなと思ってしまいました。銃を買わずにもっと良い税金を使い方をしろというメッセージは伝わったんですが、労働をさせられ納税をさせられという戦争とも違うけれど、暴力性のあるものに対しては加担してしまっている。
稲 もしここまで複雑なメッセージを込めているなら、ちょっと三鬼賞としては複雑すぎるかなと思いました。
ピ●ピイイ!
川●血税とかの意味でいうと、この「汗」は季節感がないかも。
Q●取ってからで申し訳ないですが、この句は難しいかも。
沼●頑張ります~。続いて沼野の並選です。

16 天国はきっと誰かの古本屋 沼(並)

沼●「古本屋」は誰かのぬくもりを持った本が並んでいるという句だと思ったのですが、何だかちょっと不気味さもあります
ね。人間を凌駕する上位存在が買って行くんでしょうか。
川●これ、絶対AIの句ですよ。AI選を入れるまでもなくて入れませんでした。私も沢山作らせたので分かりますが、「きっと」で音を埋める感じがAIです。
沼●やばい!引っかけられてしまったかもしれません。続いて十七番、川北さんの並選です。

17 徴兵の国にはさせず心太 川(並)

川●徴兵でいうと、明治時代の徴兵令から徴兵があって、戦後八十年経った今、極右の台頭等により、徴兵も視野に入ってきてしまっているのかなと思いました。それで「させず」の決意と、心太を押し出す際の手の力の入れる感じとが取り合わされているのかなと。
Q●人間が普通に作っていたら申し訳ないけれど、これもAI選をするまでもないAIの句だと思いました。
川●あれ、まじか。
稲●この季語の付け方は人間しかできないですよ。
Q●でも上五中七がAIっぽい。たしかに季語の付け方は確かに人間だから手直ししたAIじゃないかな。
川●「徴兵の国近づけり」とか、「徴兵の国は来たれり」とか、「徴兵の国になりけり」とかも良いかも。
沼●続いて十九番、私と川北さんの並選です。

19 大銀河雪に化石のなかりけり 川(並)・沼(並) 

沼●面白い句ですが、もっと良い上五があると思いました。「銀河」ってでかいから、「大銀河」は違うかなと。
川●これも絶対AIだと思いました。雪って化石はないだろうけれど、古層とかには残っいて、調査することで昔の気候が知れるという記事を読んだことがあるような気がするので、科学的に正しいかは△なのですが、スケールがやっぱり大きい。
稲●でもここまで何にも言っていない句はAIでもないのではと思いました(笑)。
ピ●ピイ。
川●たしかに。改作がいっぱいできそう。「雪降れり雪に化石のなかりけり」とか?
沼●また考えましょう。続いて二十四番、川北さんの並選です。

24 神様の欠伸のごとき南風 川(並)

川●スケールが大きい句だと思いました。あれ、でも何で選んだんだろう……。南風って結構強い夏の風だと思うから、「欠伸」とは違うような気がする。くしゃみだと納得が出過ぎてしまうから、寧ろギャップとして良いのかな……?「神様も欠伸をしたる南風かな」とか……?
沼●「ごとき」の見立てはやっぱり成功させるのが難しいんですかね。続いて稲葉さんの特選です。

26 銃後なる果ての真白き冷蔵庫 稲(特)

稲●「戦後」ではなく、「銃後」なんですよね。戦後の跡の景色を詠んだ句に直しても良いと思いました。この句は上五中七の「銃後なる果ての」で捻っている分、あとはあんまり凝らずにシンプルに「真白き冷蔵庫」とつないだのは良かったと思います。
川●第二十六回(二〇一八年)の大賞が冷蔵庫だったから、良くないと思うんだけれどなあ。

冷蔵庫流れたと姥わらへりき 深町明

これもAIかなと思いました。
沼●続いて、二十八番で沼野の並選です。

28 枝豆を剥きて正義を疑へり 沼(並) 

沼●おじさんっぽい俳句だなと思いました。枝豆という卑近で世俗的な生活感のあるものと、正義という大きなものを対置させていて良いなと思いました。枝豆を剥くことだけに集中することってなかなかないから、たとえば新聞を読んだりニュースを見たりしながら、正義について考え事をしたという説明も付けられそうです。まっすぐ意味内容が伝わってくる良さがあると思いました。でも大賞になるほどのパンチもないのかなあ。
川●「疑へり」なのかなあ。
沼●動詞は変更できるかもね。
Q●「ありにけり」?「あると思ふ」の方が現代俳句っぽいかな(?)。
川●「枝豆を剥くや正義はあると思ふ」とか?
ピ●ピイイ~。
沼●良いかも。改作案、また考えましょう。続いて三十番、川北さんの並選です。お願いします。

30 朽ちながら骨を洗へる鯨かな 川(並) 

川●スケールの大きさとポエジーでいただきました。鯨が浜辺に打ち上げられたのか海底かで腐っていく様子を、」を朽ちながら」と詩的に表現して、自然に還りつつある様を、魚とかプランクトンとかが肉を分解していく様を「骨を洗へる」と述べているのかなと読みました。あれ、過去作に鯨ってあったっけ。
沼●第五回(一九九七年)と第十六回(二〇〇八年)の秀逸。

ふるさとは何もなけれど鯨来る 吉原吉夫
鯨が跳ねて海がへこみし沖縄忌 竹村甲子雄

川●あれ、特に十六回の方、とても良い句だな。「朽ちながら」の負けです。並選取り消します。
稲●どんどん俳句がなくなっていく~。
沼●悲しい!続いて三十二番、沼野の並選です。

32 火星より暑中見舞ひの来ることも 沼(並) 

沼●大賞は難しいかもですが、軽みのあるユーモラスさで、秀逸の句群のほっこり枠を狙えるのではないでしょうか。
川●これも絶対AIですよ。
沼●いや、「見舞ひ」の「ひ」の表記は出来ませんよ。でも確かに怪しいのか……。今地球上の日本でもはやなくなりつつある暑中見舞いという文化が、次に暮らす火星では逆に盛り上がるかもという、ストレートな面白さのあるSFかなと思いました。続いて三十四番、川北さんの並選です。

34 衣被宇宙を一本道と思う 川(並) 

川●やっぱりスケールの大きい句だなと思いました。
稲●今日、それしか言わんやん(笑)。
川●いやいや(笑)。衣被という生活感のある料理、里芋の季語の料理から、発想が飛んで宇宙まで行くのは面白い気がしました。かつ「宇宙を一本道と思う」っていうのも結構私は説得される部分がありました。通りの良い気持ち良さがある句だと思います。
沼●でも「枝豆を剥くや正義はあると思ふ」もあるから、「思う」で食い合ってしまって、どちらかが秀逸選から落ちてしまいますかね。
川●それは気にしなくて良いんじゃない。
Q●独占しようと思っているの烏滸がましくて良いな。
稲●一本道は嘘じゃないか。
ピ●ピイ♪

36 ヘルメットを被り無音や敗戦日 川(並)

川●防空頭巾を被る戦時の感覚を、今現在ヘルメットを被る私から追想していて良い句だと思いました。「ヘルメットを」の「を」はなくて良いと私は思いました。
稲●私もこの句に並選入れたいです。
沼●並選増えた!ところで、「敗戦日」、「終戦日」、「原爆
忌」だったらどうでしょうか。
川●「無音」と負けるという感覚が良いと思ったんですよね。あとヘルメットの圧迫感とか。ピカドンを思うと無音と近いので、「原爆忌」は違うと思う。
Q●「終戦日」だとニュートラルになってしまいますよね。日本は馬鹿をやったんだぞということを「敗戦日」という言葉でちゃんと出した方がこの句に合うと思います。
ピ●ピイイ!

39 せつなさが来るサンダルのすきまから 稲(並)・Q(並)

稲●普通に良い句だと思って、三鬼賞らしさとかを忘れて取ってしまいました。スケールこそないんですけれど、日常の身体感覚というか、サンダルの頼りなさが切なさと合ってくるかなと思いました。
沼●続いてQ太郎さんお願いします。
Q●はい、だいたい似たような感じです。あとは涼しい感じが「せつなさが来る」でだいぶ味わえると思いましたね。サンダルを通じた裸足の身体感覚を詠めていると思いました。
あとね、

サンダルの青踏みしめて立つわたし銀河を産んだように涼しい
大滝和子『銀河を産んだように』

この短歌を思い出したりもしました。スケールの大きさについて言及があったけれど、小さいことから、大きいものを見いだすことも出来るよね。
沼●続いて、四十番です。

40 コスモスの翳に兵士のまどろめる  稲(並)・沼(並)・Q(AI)

稲●まあ「兵士」っていうモチーフと、「コスモス」の華やかすぎない季語と、「翳」っていうところの説得力もあるし、良いと思いました。コスモスの咲く畑じゃないけれど、群れて咲いているような空間性もあって、良くできている句だと思いました。これAIなんでしょうか。
沼●私は「翳」なんて言葉はAIからは出てこないと思って、あとは「秋桜」や「微睡める」の表記にしないバランス感覚も人間なのかなと思いました。英訳もできそうな普遍性もあって、あとは従軍画家の絵にも描かれそうな、最前線の束の間の休息という感じですね。
Q●AIじゃないかもですが、ベタなエモーショナルだなと思って、もしこれがAIだったら予想が当って気持ち良いので選びました。
川●桜のアンチとしてのコスモスだと思っていて、あとはコスモスが「秩序」というカオスの対義語であることもあって、多義的な句だと思いました。

41 くちびるのかたちに冬がつまつてゐ 稲(並)

稲●好きな句なんですけれど、三鬼賞ではないかも。感覚的にすぼめた唇のイメージがあって。 冬っていう季節のイメージも詰まっているというか、積雪のイメージなのかな。
沼●明確な像を結ぶのは難しい句かもしれませんね。続いて稲葉さん、よろしくお願いいたします。

42 ガソリンの匂ひの奥の朧月 稲(並)・沼(AI)

稲●この句、絶対だめでしたね、堂々とパクっていて見落としていました。この並選を取り消して、ヘルメットの句に並選を入れます。第十六回(二〇〇八年)の大賞です。

ガソリンの臭いの中の立葵 谷川すみれ

沼●了解しました(笑)。じゃあ、作者一覧をお渡ししつつ、AIかどうかのネタバラシもをしましょうか。

2 蟬生る告白は愛または罪  川(AI)/沼野作

稲●人間です!!! 
川●ごめん!!!

11 廃校の椅子をもらひて冬銀河  稲(AI)/Q太郎作

Q●仮名遣いを直したAIです。
稲●やったー。

12 日向ぼこ没後をじっと見ていたり  川(AI)/稲葉作

稲●こちらも人です。
川●ごめん!!!
稲●AIに自分の俳句のフォームを崩されたかもしれません。

18 地球より滴るように宇宙船  川(AI)・Q(AI)/稲葉作

稲 こちらも人です。
Q●川●ごめーん!!!
Q●「滴る」に納得感がなくて、AIかなと思いました。
沼●良い句を作るのが目的だったのに、AIに食われてしまいましたね。AIと人の句を見分けるのは難しいんですね。

22 星屑の耳につめたき眠りかな  沼(AI)/Q太郎作

Q●AIです。
沼●やったー!しゃらくせえのを選んだのよ。
Q●悪口言わないでー(笑)。

25 少年花摘んで雷を呼ぶ右手 稲(AI)/沼野作

沼●人間です! 「海程」の崎原風子の〈鳥性の少年稲妻に義手見せて〉のオマージュです。
稲●ごめん!このガチャガチャした韻律は人間だったか……。

27 日向ぼこ一億年後の骨が笑う 沼(AI)/稲葉作

稲●AIです。
沼●やったー。

37 プリントの端より霜夜剝がれけり  Q(AI)/川北作

川●手直ししたAIです。最初は「銀河剝がれけり」でした。
沼●銀河が好きですね。

40 コスモスの翳に兵士のまどろめる  稲(並)・沼(並)・Q(AI)/川北作

川●手直ししたAIです。
Q●やったー!
川●元々は「コスモスの奥に兵士のまどろめる」でした。
沼●良い添削だ。
川●私は私の俳句を食べさせながら作らせました。
沼●応募して問題提起してみよう。

43 うららかやひらがなだけの遺言書  稲(AI)/川北作

川● AIです。
稲●やったー。
沼●はい、では作者一覧をお送りしますね。見極め難しかった。「第二芸術」の発表された一九四六年から七十九年が経ったのか。「素人」と「プロ」ではなく、「人間」と「AI」の時代に突入したんですかね。
Q●でも、皆さんの普段の本気の句とAIだったら、絶対見分けられると思う。
川●今度またAI句会しましょう。
稲● AIが思ったよりよくて、出句の十一句中二句はAIです。
川●AIは十句です。でも手を入れていますし、あとは私自身の俳句も食べさせて詠ませました。
Q●私は一句だけ私がAIに寄せて詠んで、あとの十句は完全AIとAIの手直しで十句です。
沼●AIの句は網掛けしておきます。

三鬼賞応募句選定句会 作者入り

1. 天上の針の落ちなば夕立かな (Q)
2. 蟬生る告白は愛または罪 (沼)
3. 冷製ポタージュ丁寧語で喋る (川)
4. 流れ星すこしだけ硬貨のにほふ (川)
5. 来路花を買うて八十年歩く (Q)
6. 夜長とは触れてはならぬものばかり (川)
7. 無人レジ通りて我も無人なる (沼)
8. 防空壕くぐる狐の夜の顔 (Q)
9. 百人に百人の影盆の月 (稲)
10. 八月十五日自撮りがすこし良い (川)
11. 廃校の椅子をもらひて冬銀河 (Q)
12. 日向ぼこ没後をじっと見ていたり (稲)
13. 動力は心臓ひとつ蚊帳の中 (稲)
14. 天上は空蝉に似てあたたかい (稲)
15. 銃を買ふべからず汗の納税に (沼)
16. 天国はきっと誰かの古本屋 (稲)
17. 徴兵の国にはさせず心太 (沼)
18. 地球より滴るように宇宙船 (稲)
19. 大銀河雪に化石のなかりけり (稲)
20. 戦後否常戦中や金魚玉 (沼)
21. 逝くときの脳に快楽や冬薔薇 (稲)
22. 星屑の耳につめたき眠りかな (Q)
23. 水の味してくる恋はなだらかに (川)
24. 神様の欠伸のごとき南風 (Q)
25. 少年花摘んで雷を呼ぶ右手 (沼)
26. 銃後なる果ての真白き冷蔵庫 (沼)
27. 日向ぼこ一億年後の骨が笑う (稲)
28. 枝豆を剥きて正義を疑へり (Q)
29. 呼吸とはこの世を借りること晩夏 (Q)
30. 朽ちながら骨を洗へる鯨かな (Q)
31. 感冒のまぶた重力無重力 (稲)
32. 火星より暑中見舞ひの来ることも (Q)
33. 夏蝶や触れて離れてホテルの窓 (沼)
34. 衣被宇宙を一本道と思う (稲)
35. みづたまりうつしよすこしゆれにけり (川)
36. ヘルメットを被り無音や敗戦日 (沼)
37. プリントの端より霜夜剝がれけり (川)
38. デモの列こぶしの森となる晩夏 (沼)
39. せつなさが来るサンダルのすきまから (川)
40. コスモスの翳に兵士のまどろめる (川)
41. くちびるのかたちに冬がつまつてゐ (川)
42. ガソリンの匂ひの奥の朧月 (Q)
43. うららかやひらがなだけの遺言書 (川)
44. AIに俳句は書けず紙魚踊る (沼)

沼●AIだらけだ!
一同●ありがとうございました!

◆第五夜(二〇二五年十月三十一日)

沼●皆さん!締切日です。整えた五句を教えてください。一句は入れ替えをされましたかね?
稲●初心に立ち返って、全部私の句にしました!

稲葉航
東西に大陸ありて蘆を焼く (入替)
まつたうに生きて蠅叩を振りぬ (入替)
春塵や会ひたき人はみな都 (入替)
蟻の列蟻をやりくりしてゐたり (入替)
てのひらに柘榴がこはいほどなじむ (入替)

川北聡司
夜長とは触れてはならぬものばかり (句会)
八月十五日自撮りがすこし良い (句会)
せつなさが来るサンダルのすきまから (句会)
コスモスの翳に兵士のまどろめる (句会)
あゝからだぢゆう歯が咲いてくる沖縄忌 (入替)

西園寺Q太郎
枝豆を剥くや正義はあると思ふ (推敲)
火星より暑中見舞ひの来ることも (句会)
天上の針の落ちなば夕立かな (句会)
サルビアを買うて八十年歩く (推敲)
水母水母水母不発弾水母 (入替)

沼野
徴兵の国にはさせず心太 (句会)
ヘルメット被り無音や敗戦日 (推敲)
焼跡に佇つや真白き冷蔵庫 (推敲)
踏まれたる頭を振つて蟻は陽へ (入替)
手袋の指の不自由誰から征く (入替)

沼●人間派の稲葉さん、ちょっとAIな沼野、かなりAIな川北さんとQ太郎さん!勝敗は如何に!
一同●大賞、よろしくお願いします!!!!!

◆第六夜(二〇二六年三月某日)

川●サイトが更新されている!稲葉さん、秀逸だ!

まつたうに生きて蠅叩を振りぬ  稲葉航

一同●おめでとう!!!二万円!!!
川●すみません!私、ちょっとWBCの代打に呼ばれたので、行ってきます。
沼●そちらを優先してください!さて、応募者全員に配布される記念冊子の『「西東三鬼賞」俳句作品集』も届いたことですし、三人で振り返りますか。
Q●大賞は二年連続で「売り」でしたね。

全て空に放ち風船売り辞める  西田克憲
虫売です風葬にしてくれますか  木村オサム

稲●私はどちらかというと、「風船売り」の方が好きかな……。
沼●二年連続で資本主義(?)がテーマとは、全く予想できませんでした。私も「風船売り」の方が好きかなあ。
Q●私も「風船売り」の方が好きかなあ。畳みかける韻律にも工夫を感じました。
稲●「風葬」という言葉が便利すぎるのかもしれないです。
沼●ポエジーを手軽に出しやすいところはありますよね。
Q●この大賞の句の感じは何と言えばいいんでしょうね。
沼●「ですます調」がどれくらい効いているのかという点も難しくて、死とですますでいうなら、〈約束の寒の土筆を煮てください/川端茅舎〉がある以上、並ぶか超えてほしいところがあるかもしれません。
稲●求めるハードルが高いですね(笑)。
Q●でもこの句を出すの、結構博打だったと思うんですよね。
沼●久保純夫先生が選考所感に書かれているように、これまでの三鬼の大賞に口語句はなかったし、新しい風を吹かせたのかもしれません。
Q●寺井谷子先生の欄で、稲葉さんの句が言及されています!「身近な日常の中に、自分自身の生きざまを肯定する強さ」とありますね。〈まつたうに生きて蠅叩を振りぬ〉を推してくれたのは寺井先生だったのかもしれませんね。
沼●ありがたいです。
Q●自分で自分のことを「まつたうに生きて」と述べることは青臭いことなんだけれど、そうやって自分を鼓舞したくなる瞬間はあるなと思いました。世の中って尖っていたりズルしたりする人も結構いて、でも良い意味での現状維持に努めてくれているのは、こういう「まつたうに生きて」いる人たちだと思う。
稲●どうしたの(笑)?ありがとう。
Q●いえいえ。あと、黒岩さんの言葉に「作為的であることの危うさと、平板であることの退屈さ、どちらを避けるべきか?西東三鬼賞においては後者であると私は思う。」とありますね。
稲●方針を知れたの、来年に向けてプラスですね。秀逸のなかで、私が好きだったのは

永き日や毬藻を少し転がして  美幸

でした。
沼●飄々とした良い句ですね!三鬼賞の大賞にするには、穏やか過ぎるのかな。

稲●大賞にはパンチが要るかもです。
Q●秀逸の句のゾーンが広いと、ハックする側としては悩まされますね。私が好きだったのは、

少年の空に刺さつてゐた燕  石田樹覚

実直に情景を想像しようとすると、ちょっと笑えました。ポエジーがある一句だと思います。
稲●あと注目すべき作家がいて、石原とつきさんです。秀逸一句、入選に一句、佳作に四句いらっしゃいます。
沼●凄い!
稲●noteも更新されているようで、どうやら二組(十句)だけ提出されたようで、凄い精度です。
Q●佳作のこの句、特にリズムが凄いです。

食パンは鎖骨はるかかなたチャイム  石原とつき

沼●ライムが凄いですね。ラップだ。さてさて、来年は口語とか破調とかも含め、のびのび各々やってみましょうかね。また来年も挑戦して、次は是非大賞を獲りましょう。でもAIはちょっとこりごりかなあ(笑)。
一同 ありがとうございました!

(完結・来年に続く)

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