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2019-08-04

【句集を読む】三月のカブトガニ 加藤知子『櫨の実の混沌より始む』の一句 西原天気

【句集を読む】
三月のカブトガニ
加藤知子櫨の実の混沌より始む』の一句

西原天気


単身赴任カブトガニをつれ三月  加藤知子

4月からの配置転換でこれまでとは別の土地へと赴く。家族はそのまま残り、カブトガニだけが同行。

ペットとして飼うこともあるだろうから、現実のエピソードとして読める。それなら、このカブトガニ、いじらくて可憐。この人に唯一寄り添ってくれている。

一方、私たちがカジュアルに目にすることのない生物だけに、ちょっとした幻想味を帯びる。

現実、幻想のいずれにしても、動詞「つれ」に、彼/彼女の意思が宿り、景が毅然とする。

一句として、静かな小品映画のような味わい。


加藤知子『櫨の実の混沌より始む』2017年12月/ジャプラン

2018-07-01

10句作品 花はどこへ 加藤知子


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花はどこへ   加藤知子

夏風邪の耳鳴り三角縁神獣
脳の襞さわぐ万緑かがみの間
梅雨おんな闇の国から踊りでて
湯浴みの時間蜘蛛たれさがる時間
花は実に露出狂なるランナーなる
扇風機菜食主義者ののどぼとけ
街じゅうに犬のしっぽの林立す
いいえ花はどこへ行ったの排卵日
阿蘇白雨ミトコンドリア・イブ撓る
水上にかさね花びら反抗す