自由律俳句を読む48
風呂山洋三〔2〕
馬場古戸暢
前回に引き続き、風呂山洋三句を鑑賞する。
癖のある字思い出す春のデスクの上 風呂山洋三
なぜか思い出した癖のある字。しかしその持ち主は、今や職場にはいないのだろう。春日さす日の、なんでもないぼんやりと時間を詠んだ句。
初めての空泳ぐ真鯉は俺だ 同
自身の家庭に生まれてきた息子のために、鯉のぼりを一式買ってきたのだろう。自身と妻、幼い息子が暮らす家の上には、真っ青な空が広がっている。この家庭に、幸あれ。
タンバリン鳴らす子と端居のゆうだち 同
タンバリンが鳴る家の外の端居を、ゆうだちがおそいはじめたところを詠んだものか。タンバリンの音とゆうだちの音、勝つのはどちらか。
ページめくる手の早い小説だ 同
一ページあたりの文字数が少ないのか、つまらないのか、その両方か。忙しい現代人には、こうした小説がよいのかもしれない。
急いで帰ってくるはず曾孫のできた盆の入り 同
すでに亡き祖父を想う、父親になったばかりの男が詠んだ句。そりゃあ祖父も、急いで帰ってくるほかないだろう。あなたの血を、この子へ継がせることができました。
2014-06-22
自由律俳句を読む48 風呂山洋三〔2〕 馬場古戸暢
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2014-06-15
自由律俳句を読む47 風呂山洋三〔1〕馬場古戸暢
自由律俳句を読む47
風呂山洋三〔1〕
馬場古戸暢
風呂山洋三(ふろやまようぞう、1971-)は、宮城県在住の自由律俳人。尾崎放哉の句に感銘を受け、2012年より自由律俳句を始める。同年、河東碧梧桐と中塚一碧楼に関心を持ち、自由律俳句結社『海紅』の門を叩く。翌2013年、さらなる活動の場を広げるべく、自由律俳句集団「鉄塊」に参加。
懐かしい人と会う秋めく夜だ 風呂山洋三
個人的には、相手は同性であってほしい景。こうした再会は、秋めく夜にこそふさわしい。
木立の影刺す冬のベンチの身の上だ 同
冗長な雰囲気が、冬の日中の空気を描いているように思う。この身の上には、木立の影のほかにどのような困難(?)が刺さっているのだろうか。
オリオンの瞬き授かる仕事帰りだ 同
私たちが生きているうちに、オリオン座の輝きがひとつ失われてしまうのだとか。そうした時に生きられたことに、そして仕事をできていることに、感謝したい。
障子開ければ祖母の見ていた祖父の松 同
祖父母の家での景だろう。祖父も祖母も、もうこの世にはいない。庭先にそびえる松に、祖父と、祖父に先に逝かれた祖母のことを想うばかりである。
肩落とした先の土筆伸びてら 同
いろんなことが起ころうが、季節はめぐり土筆が伸びる。明日もやっぱり頑張ろう。
Posted by wh at 0:03 0 comments
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