【週俳12月の俳句を読む】
さいばら天気異物挿入
白鳥定食いつまでも聲かがやくよ 田島健一
してはならないことかもしれないが、この句を〔白鳥やいつまでも聲かがやくよ〕と変えてみる。切れを意味の断絶ととれば、「聲」は冬の空気の輝いている声、人の声とも思える。あるいは、〔白鳥のいつまでも聲かがやくよ〕。これだと白鳥の声だ。いずれも凡庸な把握である。
この作者は、ここに「定食」という異物を挿入する(作句の手順はもちろんのこと、そうではないだろうが)。
「白鳥」やら「聲」やら「かがやく」やら、いかにも詩的にきらきらとした語のつらなりのなかに、「定食」という、あられもない事物が割って入る。そのとたん、とんでもなく刺激的な「俳句」が立ち現れる。
「定食」と、ひとこと挿入するだけ、たったそれだけのことなのだ。しかし、ことばの成功とはそういうものだろう。俳句をひねりだすことは、複雑な化学実験でも精緻な時計製作でもない。壮大な計画や多大の資源投入によってもたらされるのでもない。ちょっとしたこと、あるときはいたずらのような、あるときは気の迷いのような、ほんの些細な事件なのかもしれない。
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■ 田島健一 「白鳥定食」10句 →読む
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2008-01-13
さいばら天気 異物挿入
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1 comments:
仮に「白鳥やいつまでも聲かがやくよ」とするなら、仰るとおり、凡庸な句、いかにも「白鳥」のためにあつらえられたお決まり・お定まりの句、いわば「白鳥」の為の「定食」的な句ということになりそうですね。そこにあえて「定食」という言葉を持ち込むことで、「否定」の「否定」が「肯定」になるのではなく、もっと別物に成り代わってしまう、俳の精神(否定の精神というのか)の面白い効果・結果がもたらされるのかもしれませんね。
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