2008-01-13

上田信治 すこし遅れて

【週俳12月の俳句を読む】
上田信治
すこし遅れて




裏口で鯨の肉を見せらるる   仲 寒蝉

その肉の味を、自分が知っていることに驚く。


紅葉山展く四〇二号室   矢羽野智津子

紅葉山「を」四〇二号室「が」展く、ではなく「紅葉山」「展く」「四〇二号室」。


襟巻や誤読のやうに夜が来て   笠井亞子

いつのまにか、すっかり誤読である。寒い。


地に雪嶺生れ雪嶺に雲うまれ   相子智恵

アニメである。


鴨つぎつぎ胸のかたちを整へり  太田うさぎ

萌えである。


鏡中のこがらし妻のなかを雲   田島健一

すばらしく妻をほめている。


石跳びぬ蹴るともなしに冬日向  小池康生

てんてんとする石を追う、作者。すこし遅れて、読者。そのさきに冬日向。




浜いぶき 「冬の匂ひ」10句 →読む
小池康生 「起伏」10句    →読む
田島健一 「白鳥定食」10句  →読む
太田うさぎ 「胸のかたち」 10句  →読む
冨田拓也 「冬の日」 10句  → 読む
相子智恵 「幻魚」 10句  →読む
笠井亞子 「page」 10句  →読む
中原徳子 「朱欒ざぼん」 10句 →読む
矢羽野智津子 「四〇二号室」 10句 →読む
仲 寒蝉 「間抜け顔」 10句 →読む



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