2010-09-12

【週俳8月の俳句を読む】久保山敦子

【週俳8月の俳句を読む】
久保山敦子
西瓜には芯がない



小豆澤裕子「踏ん張る」より。

消印の赤き八月六日かな  小豆澤裕子

赤い消印というと、子どものころ切手を集める趣味に「初日スタンプ」というのがあったことを思い出した。今ではどんな赤いスタンプがあるのだろうと調べてみると、「風景印」、「小型印」と呼ばれるものがあって、郵便物を差し出すとき、差し出す人の申し出によって押されるそうだ。思い出や記念にと押される消印だが郵便局では、これらの消印があることを、積極的に周知宣伝していない場合が多いので、マニア以外にはあまり知られていないらしい。今度、郵便局で聞いてみよう。

作者は受け取った郵便物に押されていた消印が「赤」であること、そして日付が8月6日であることに気づいた、差出人は旅の思い出にと押したのだろうが、日本人にとって「祈りの日」であるこの日の消印に作者はやや違和感を覚えたのではないか。カレンダーの大事な日に「赤丸」をつけることもあるが、「忘れてはいけない日」というメッセージにも受け取れる。


マンションが日蔭をつくる墓参  同

家を捜すとき、近くに墓地があると敬遠されることも多い。気にしないといっても、窓を開けて墓石が見えるというのはあまり気分のいいものではないだろう。この墓地はマンションから見下ろされるのかもしれない.。現実に生活している人たちの住まいの影がすっぽりと墓を覆ってしまうという、現代の墓事情ではあるが、「日蔭をつくる」という措辞に、無機質な物体の影が仏恩にも思えてくる。


西瓜真つぷたつ核心には触れず  同

この句を読んだとき、一瞬にしていろんなイメージが重なってきた。さきに読んだ「消印の赤き八月六日かな」の余韻が残っているからであろうか、「核心」の「核」が「核爆弾」の「核」とだぶってくる。となると「西瓜」まで「爆弾」を連想し、そして「赤」い果肉が炎のように見えてくる。胸に迫ってくる「赤」だ。そういえば西瓜には芯がなかったっけ……。


岡本飛び地 「病室」より。

カーテンの折り目の固き帰省かな  岡本飛び地

帰省した折の「折り目の固き」カーテン。 かつて自分の部屋だったのだが、もう使われることもなく、カーテンも開けっ放しだ。久々の部屋に寝ることになってカーテンを引くと、折り目が蛇腹のようになっている。家を発ったあの日以来、この部屋の時間は止まったままだ。「カーテンの折り目の固き」は、なんと「胸キュン」な言葉だろう。


新米に桃色の箸通りけり  同

好きな句に「 秋の夜や紅茶をくぐる銀の匙 日野草城」というのがある。「紅茶をくぐる」という言い方がとってもおしゃれ。「新米」に通る「桃色の箸」にはうれしさがあふれている。米粒の一粒づつが光って立っているようだ。「通る」箸先が透けて見えてくる。


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岡本飛び地 病室 10句 ≫読む
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〔ウラハイ〕
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