〔祐天寺写真館・メキシコ篇〕
グサノ
長谷川裕
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蟲料理のレストランにご招待された。
皿に盛られているのは竜舌蘭につくゾウムシの幼虫。見てのとおり芋虫である。「グサノ」と呼ぶ。それを煮て油で揚げたもの。先住民の常食であった。
この地を占領した支配者の口にはあわなかったが、昨今は先住民文化の見直しとかで人気があるらしく、けっこうなお値段だ。味はというと、川海老の揚げものみたいなパリパリした食感である。さっぱりしてビールのつまみによろしい。こいつをすり潰した粉をいろいろなものに混ぜて食べたりもするようだ。
「メスカル」と呼ぶ蒸留酒がよく飲まれるが、その瓶にアクセントとして「生」のグサノが一匹入っていることがある。瓶の底にぷよぷよと沈んでいる。「メスカル」を「メスカリン」と勘違いして、芋虫の入っているメスカルは「効く」と思い込んでいる人もいるようだが、そんなことはありません。メスカリンの抽出されるペヨーテ(これは竜舌蘭ではなく、サボテンの一種)に付く虫じゃないので、とりあえず。
地方では蟲を普通に食べる。とくにバッタ。「チャプリン」と呼ぶ。イナゴみたいなものと思えばよろしい。ワハカ市のメルカードを見物に行ったら、唐辛子の粉を混ぜたチャプリンが売られていた。赤、黄、茶などいろいろな種類の小エビの佃煮みたいなのが、樽に山盛りで並んでいた。トルティーヤにはさみ、ライムを絞って食す。少し苦味がある。
チャプリンはある種のトウモロコシに付くので、チャプリンを収穫するためのトウモロコシ畑があると聞いた。畑全体がイナゴでわさわさしている図を想像してしまった。ともあれ、蟲は肉や魚より栄養価が高いのだそうである。
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