2011-10-09

〔週俳9月の俳句を読む〕三島ゆかり

〔週俳9月の俳句を読む〕
月真下

三島ゆかり


  上弦の月だよお尻が右だもの     哲郎
   写る水面も西を向く秋        ゆかり

「月姿態連絡乞ふ」と求められれば「月真下」と応えるしかない。それが、挨拶というものだろう。佐山哲郎の句は、可笑しすぎる。俳句ですらあろうとしない、八方破れななにかである。
明治になって「発句」が「俳句」という言葉に置き換えられて以来、多くの俳人にとって諧謔性は、大切とされながらも格調性や一句としての独立性の下に見られてきた感がある(もちろん諧謔を前面に出して成功した俳人だっていただろうが…)。佐山哲郎の句はその諧謔性に満ちている。
それがいかに可笑しいかを説明することは、おそらく可能だろう。「公衆電話の箱」や「窓の下には神田川」ににやりとしたり、「必死のパッチ」に絶句して語源について蘊蓄を傾けたり、「亥中の抜き身」ってお蕎麦のことかなあと首をひねったりしつつ、佐山哲郎論をまとめるようなやり方だ。
でも多分、違う。そんな感想文は期待されていない。この人は座の人なのだ。俳句ですらあろうとしない、八方破れななにかとは、すなわち連句性なのだ。一句の中で完結することを志さず、十七音すべてを駆使して、諧謔をぶつけ、そして応えを待っている。言わば、すべての読者は佐山哲郎の連衆なのである。


  既望とはフォボス・ダイモス順不同   哲郎
   両側に立つ大道芸人         ゆかり





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