2014-07-27

【週俳6月の俳句を読む】曲者 黒岩徳将

【週俳6月の俳句を読む】
曲者

黒岩徳将



紫陽花やのれんを仕舞う定食屋 梅津志保

亭主、あるいは奥さんのごそごそとのれんを片付ける仕草が見える。定食屋の店先の紫陽花は仕舞われないままだ。

定食、と言われると私は揚げ物を想像したりする。店の中には、紫陽花の色はない。だから、ひときわ紫陽花の色が目立つ。


カビ・キラー置かれて六月ゆらゆらす 井上雪子

カビキラーは、ジョンソン株式会社の取り扱うカビ取り剤のことである。公式Webサイトを見ると、「浴室・ゴムパッキン用」「キッチン・食卓まわり用」「洗濯槽用」の三つがあるとわかる。

この句を解釈・鑑賞する上で、重要なのが、「どのタイプのカビキラー」なのかということである。

私は、浴室用だと取りたい。湯を浴びるのでなく浴室に入る唯一の時間である、「掃除」。その時に見つめたカビキラーがゆらゆらしていたのだ。

その「ゆらゆら感」を表す仕掛けが三つ。「カビ」「キラ」の間の中点、中八、そして季語としての「六月」。

よくよく見れば、曲者な句だ。


水打つや影煮えたぎる人として 高坂明良

打ち水をするときに道路に映った自分の影を「煮えたぎる」と大げさに捉えた。

だが、高坂の「六月ノ雨」全体を読むと、十七文字で言い切らない姿勢が見える。一句目も果たしてこの解釈でいいのか、不安が残る。

十句単位では、高坂の句が最も頭の中をくすぐられた。


第371号 2014年6月1日
陽 美保子 祝日 10句 ≫読む
第372号 2014年6月8日
髙坂明良 六月ノ雨 10句 ≫読む
原田浩佑 お手本 10句 ≫読む
 第373号 2014年6月15日
井上雪子 六月の日陰 10句 ≫読む
第374号 2014年6月22日
梅津志保 夏岬 10句 ≫読む
第375号 2014年6月29日
西村 遼 春の山 10句 ≫読む

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