2018-06-03

【週俳5月の俳句を読む】視点を読む しなだしん

【週俳5月の俳句を読む】
視点を読む

しなだしん


そこにまた別の椿がひたと落つ  小山森生

他の9句と比べるとおとなしい句かもしれない。椿が落ちる場面を詠った句は数えきれないだろう。この句は「別な」という言葉で複数の落椿があることを表現している。「そこにまた」は落椿のある地面を指している。今散った椿から見れば先客がそこに居たようなもの。ちょっとした可笑しみもある。「ひたと」が必要なのか、とも思ったが、「ひたと」からやや湿ってしっとりとした椿の花がが想像できる。

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ケルンより離れて低き遭難碑  広渡敬雄

「ケルン」は山頂付近で登った記念に積まれた石。石を積み上げて道標としたもの。本来は石を積み上げて道標としたもので、「登山」の傍題。この句はそのケルンから少し離れたところにある「遭難碑」が詠われている。石に碑文が刻まれているのかもしれない。気になったのは「低き」だ。遭難碑そのものが、低いものなのか、ケルンに比べて低いのか、ケルンのある場所よりやや標高が低い場所とも読めなくもない。いずれにして山の事故はあってはならない、と自分を戒めた作者かもしれない。

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じゃんけんは三回勝負風光る  藤田亜未

確かに子どもの頃、「三回勝負」というのがあった。なぜ三回もするのか思い出せないが、よほどのことを決める局面だったのか、単に暇を持て余していた、という気もする。取り合せの季語「風光る」から、きらきらしたこどもの時間が感じられる。

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琉金の鈴鳴るやうに寄りきたる  川嶋一美

「鈴鳴る」という比喩は見かけないわけでは無い。この句の比喩の対象は「琉金」。琉金は鰭の長い金魚で流麗な金魚。和金の中から突然変異で生まれたんだとか。場所の情報が無いため作者がどういう目線で見ているのか判らないが、「寄りきたる」に作者の驚きのようなものが現れている。


小山森生 浮氣女のやうに 10句 ≫読む
第577号 2018年5月13日
広渡敬雄 雪渓 10句 ≫読む
藤田亜未 風に乗る 10句 ≫読む
第579号 2018年5月27日
川嶋一美 蒼く 10句 ≫読む


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