2017落選展を読む
12.「宮﨑莉々香 うそぶく」
上田信治
宮﨑莉々香 「うそぶく」 ≫読む
この人が「円錐」「オルガン」に書くものと手応えがだいぶちがって、読めば書かれているとおり、そのままの意味で頭に入ってくる。
散文のような、日常言語に通じる構文意識で書かれているようだ。とすれば、それが、どこで俳句になるか、が勝負になってくるのだけれど。なかなかむずかしい。
昼は春みんなで銀杏をわける
球根をならべもどれないんだよもう
ささやかにつつじを捨ててあるきだす
十七音を、カットアップされた映像の断片のように使って、言葉足らずを逆手にとっている。字数が足りなくなりがちな口語俳句では、ときどき試される方法だ。
TVドラマのアヴァンのような、断片的カット。動詞の時制はひたすら現在形終始。その前後で、何が起こっているかは分からない。本編の全体を作らなくてよいのだから、なんでも好きに書けるようだけれど、じゃあ、たとえば少女漫画の1コマだけ描いて、それを成立させられるかといえば、それは、ずいぶんむずかしいわけで。
どうだろう、これ。俳句としての構造を獲得している句は、あるだろうか。
ノートとるほんとつまらないね虹たち
手をつなぎむなしくなつてゐる白鳥
パンジーを見るもごもごとしてしまふ
きっと、これは「高校生やつし」の50句なのだろう。タイトルも「うそ・ぶく」だし。
「虹たち」の「たち」は、ちょっと面白い。
正月が来てなんとなく食べる海苔
機械からうごかなくなつてつちふる
さいごのほうで、すこし面白くなってみたりしている。
くたびれて夏野を最高に行かう
これなんかは、ちょっとよかった。
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2017角川俳句賞「落選展」
2018-08-19
2017落選展を読む 12. 「宮﨑莉々香 うそぶく」 上田信治
Posted by wh at 0:04
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