2018-08-19

2017落選展を読む 12. 「宮﨑莉々香 うそぶく」 上田信治

2017落選展を読む 
12.「宮﨑莉々香 うそぶく

上田信治

宮﨑莉々香 「うそぶく」 ≫読む 

この人が「円錐」「オルガン」に書くものと手応えがだいぶちがって、読めば書かれているとおり、そのままの意味で頭に入ってくる。

散文のような、日常言語に通じる構文意識で書かれているようだ。とすれば、それが、どこで俳句になるか、が勝負になってくるのだけれど。なかなかむずかしい。

昼は春みんなで銀杏をわける
球根をならべもどれないんだよもう
ささやかにつつじを捨ててあるきだす


十七音を、カットアップされた映像の断片のように使って、言葉足らずを逆手にとっている。字数が足りなくなりがちな口語俳句では、ときどき試される方法だ。

TVドラマのアヴァンのような、断片的カット。動詞の時制はひたすら現在形終始。その前後で、何が起こっているかは分からない。本編の全体を作らなくてよいのだから、なんでも好きに書けるようだけれど、じゃあ、たとえば少女漫画の1コマだけ描いて、それを成立させられるかといえば、それは、ずいぶんむずかしいわけで。

どうだろう、これ。俳句としての構造を獲得している句は、あるだろうか。

ノートとるほんとつまらないね虹たち
手をつなぎむなしくなつてゐる白鳥
パンジーを見るもごもごとしてしまふ


きっと、これは「高校生やつし」の50句なのだろう。タイトルも「うそ・ぶく」だし。

「虹たち」の「たち」は、ちょっと面白い。

正月が来てなんとなく食べる海苔
機械からうごかなくなつてつちふる


さいごのほうで、すこし面白くなってみたりしている。

くたびれて夏野を最高に行かう 

これなんかは、ちょっとよかった。



2017角川俳句賞「落選展」

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