2018-08-26

2017落選展を読む 14. 「薮内小鈴 東都」   上田信治


2017落選展を読む 
14. 薮内小鈴 東都

上田信治

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呉爾羅へと巻く朝顔が窓のそと

呉爾羅はゴジラなのだそうだ。これが一句目なので、全体が冗談として書かれている可能性がある。気を引き締めて読み進む。

入口と出口の猫や秋の径

猫のいる町はいい町だという人もいるのだから、この径はいい道にちがいない。「秋の径」も散歩が楽しそうだからOK(新人賞的には×に近い△かもしれない)。

きはやかにお釜語飛びぬ秋時雨

うーん。「〜語」「飛びぬ」というあたり、愛情がないかもしれない。おおいに抵抗あり。

指先をつまみ手袋拾ひけり

これは、いい句。つまんで拾った指先が見え、その指と手が反転したように、ぴろーんと手袋がぶらさがる。

祭帯締め合ひけふの秋薊」「鉄骨を組めばゆらりと芒原」「富士山の先に日の入る冬至かな」「南風に貝殻そへて鉢数多」のような、ふつうに読める句もあれば、「つくつくし淡き声する旅人も」「青蜜柑ゆふべの卓に汐微か」「鳩ぴしと散らしたる店浅き春」「そのままに春菊ぱらり滴落つ」のような、成立しているかどうかもあやしい句がある。

あばれんぼうですね、この作者は。今後に大いに期待。

日光より猿来りけり春の土

あははははは。これは、句会に出たらぜったいとる。

2017角川俳句賞「落選展」

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