2017落選展を読む
14. 薮内小鈴 東都
上田信治
薮内小鈴 「東都」 ≫読む
呉爾羅へと巻く朝顔が窓のそと
呉爾羅はゴジラなのだそうだ。これが一句目なので、全体が冗談として書かれている可能性がある。気を引き締めて読み進む。
入口と出口の猫や秋の径
猫のいる町はいい町だという人もいるのだから、この径はいい道にちがいない。「秋の径」も散歩が楽しそうだからOK(新人賞的には×に近い△かもしれない)。
きはやかにお釜語飛びぬ秋時雨
うーん。「〜語」「飛びぬ」というあたり、愛情がないかもしれない。おおいに抵抗あり。
指先をつまみ手袋拾ひけり
これは、いい句。つまんで拾った指先が見え、その指と手が反転したように、ぴろーんと手袋がぶらさがる。
「祭帯締め合ひけふの秋薊」「鉄骨を組めばゆらりと芒原」「富士山の先に日の入る冬至かな」「南風に貝殻そへて鉢数多」のような、ふつうに読める句もあれば、「つくつくし淡き声する旅人も」「青蜜柑ゆふべの卓に汐微か」「鳩ぴしと散らしたる店浅き春」「そのままに春菊ぱらり滴落つ」のような、成立しているかどうかもあやしい句がある。
あばれんぼうですね、この作者は。今後に大いに期待。
日光より猿来りけり春の土
あははははは。これは、句会に出たらぜったいとる。
2017角川俳句賞「落選展」
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2018-08-26
2017落選展を読む 14. 「薮内小鈴 東都」 上田信治
Posted by wh at 0:04
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