後記 ● 上田信治
相子智恵さんの「週俳10月の俳句を読む」は、高山れおなさんの〈美しき島(フオルモサ)は露原隠れさまよふ島〉一句に向けられた鑑賞文です。
高山さんの「俳諧曾我」や「詩経によせて」のシリーズを総合誌に掲載されるたびに読み、実のところ、奇妙な気分を味わっていました。既存のテキストに相唱されたとされる作品を、原典抜きで読む、つまり、提示された作品を、その作品内で読み切れない、この「宙吊り」感……教養がないことを責められているのか、宿題を出されてしまったのか、いや、この「半分目隠し」状態自体が作者の狙いなのか、パスかな、とかいろいろ。
「週刊俳句」に「詩経によせて」の一部をご寄稿いただけることになり、ならば、必ず原典を併載して、並べて読めるようにしようと思っていました(簡単にネットで拾えると思っていたのですが、そうでもなかった。「詩経秦風」10篇の白文と読み下し文が載っているサイトは、今のところ、週俳だけです)。
たしかに、印象は一変しました。
相子さんは、さる詩誌に掲載された「詩経によせて」を読み、『詩経国風』2冊ををアマゾンで即買いされたそうです。
これはもう、作品が「待ちに待った読者を得た」と言っていいのではないでしょうか。
あ。
今、気がついたんですが、高山さんの作品は、ちょっと「ツンデレ」なのかもしれませんね。
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先週よりはじまった「2008角川俳句賞落選展」も、公開が続いています。
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では、また、次の日曜日にお会いしましょう。
no.080/2008-11-02 profile
■小野裕三 おの・ゆうぞう
1968年、大分県生まれ。神奈川県在住。「海程」所属、「豆の木」同人。第22回(2002年度)現代俳句協会評論賞、現代俳句協会新人賞佳作、新潮新人賞(評論部門)最終候補など。句集に『メキシコ料理店』(角川書店)、共著に『現代の俳人101』(金子兜太編・新書館)。
サイト「ono-deluxe」http://www.kanshin.com/user/42087
■三宅やよい みやけ・やよい
1955年神戸市生まれ。現代俳句協会会員。「船団の会」会員、「豆の木」に参加。句集『玩具帳』『駱駝のあくび』。清水哲男『新・増殖する俳句歳時記』木曜日担当。
■相子智恵 あいこ・ちえ
1976年長野県生。「澤」同人。2003年澤新人賞、2005年澤特別作品賞受賞。俳人協会会員。
■石原ユキオ いしはら・ゆきお
春夏秋冬新年とあんた愛した地獄の季節詰めた小指で襖に書くは十七文字のラブレター。
1982年生まれ、岡山在住。http://www.d-mc.ne.jp/blog/575/
■岡村知昭 おかむら・ともあき
1973年滋賀県生まれ。「狼」「豈」同人。
■小林鮎美 こばやし・あゆみ
1986年群馬県北部山沿い生まれ。文芸同人誌『界遊』に参加しています。http://kai-you.net/
■西村 薫 にしむら・かおる
福岡県宗像市在住 菅原鬨也主宰「滝」所属、同人。
ブログ「エロティシズムを詠む 生命賛歌 http://ameblo.jp/asap1956/
この指とーまれ! http://9130.teacup.com/asap/bbs
■樋口由紀子 ひぐち・ゆきこ
1953年大阪府生まれ。姫路市在住。「MANO」編集発行人。「バックストローク」「豈」同人。句集に『ゆうるりと』『容顔』。セレクション柳人『樋口由紀子集』。共著に『現代川柳の精鋭たち』。川柳Z賞受賞。川柳句集文学賞受賞。「川柳MANO」サイト http://ww3.tiki.ne.jp/%7Eakuru/
■野口 裕 のぐち・ゆたか
1952 年兵庫県尼崎市生まれ。小池正博と二人誌「五七五定型」を年に一度出す。昨年11月に、第二号を発行。入手希望の方は、 yutakanoguti@mail.goo.ne.jpまで(定価なし)。その他、「もとの会」、「北の句会」、「樫句会」、「逸」、「垂人」に参加。 サイト「野口家のホームページ」http://www.saturn.dti.ne.jp/~ngyutaka/
■LUGAR COMUM るが・こむん
1961年生まれ。渋谷育ち。走るベッドルームDJ。
■五十嵐秀彦 いがらし・ひでひこ
1956年生れ。札幌市在住。現代俳句協会会員、「藍生」会員、「雪華」同人、迅雷句会世話人。第23回(2003年度)現代俳句評論賞。サイト「無門」 http://homepage2.nifty.com/jinrai/
■舟倉雅史 ふなくら・まさし
高等学校国語科教師。「横浜シティ・シンフォニエッタ」ファゴット奏者。
■上田信治 うえだ・しんじ
1961年生れ。「ハイクマシーン」「里」「豆の木」で俳句活動。ブログ「胃のかたち」
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2008-11-02
後記+プロフィール 080
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1 comments:
上田信治様
拙句への言及、感謝します。教養がないことを責めるなどということはありえません。教養がないのはお互い様だからでもありますが、そもそもプレテキストを設定するのは作者の都合で、読者が負い目を感じなければならない筋はない。まあ、プレテキストが芭蕉その他、かりにも俳句をやる人間にとっての必須の勉強範囲に収まっているなら話は別でしょうが、小生が今やっている仕事はそれには当たりますまい。相子さんへの文章でも書きましたが、本にする段階での編集で印象はかなり変わるでしょう(変わらないと困る)。要は、俳句を提示するスタイルにはさまざまな可能性があり得るという当たり前の立ち位置で、ゆったり構えていて下さればと。希望するのはそれだけです。ストライクを投げる気は満々ですが、結果はわかりません。
白文と読み下しの掲載、大変だったでしょう。しかし、お礼を述べるべき筋なのかどうかもわからず、ご連絡もしませんでしたが、今は遅ればせながらお疲れ様を言わせていただきます。
◆これはもう、作品が「待ちに待った読者を得た」と言っていいのではないでしょうか。
いやもう全く。しかし、相子さんはまさに「理想の読者」ですが、理想の読者に甘えるわけにはゆかないというのも、作り手としての小生の因業ではあります。
◆今、気がついたんですが、高山さんの作品は、ちょっと「ツンデレ」なのかもしれませんね。
ツンツンデレデレですか。取り合えず、最高の褒め言葉と受け取っておきます(笑)。
十一月三日
高山れおな拝
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