後記 ● 上田信治
巻頭「夏八十句」は寺澤一雄さんの、2005年の9月から継続中(この9月で丸5年)の、1日10句から、この夏の1日1句を集めてご紹介いたします。
東大の周りは塀や麦の秋
ズッキーニ花は黄色に実も黄色
クロールは人の泳ぎやたゆまざる
柄も骨もなくて団扇と言へるのか
何かに憑かれたように(と周りの人は言います)書き続ける寺澤さんですが、句柄はいたって暢気、おおがら、涼しげ。どうぞお楽しみ下さい。
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島田牙城さんの「文語つたつて、そりや貴方……」は、前回の「仮名使ひのこと再び」と併せて、必読。文語と仮名遣いについては、もう、各人の、腹の据え方の問題でしかないと、はっきりししてしまいました。(牙城さんご自身は、用字用語を、もののふの刀にたとえ、おろそかな気持ちで選べるわけがない、と言う人でもあります)
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「「フェアリーとヒトの大会」参加レポート」は、アメリカ在住のYoshiko McFarlandさんの、なんとも気持ちの良さそうな(すごくいい場所!)、ニューエイジ系のイベント記録。ものすごくビールとかパンチとか飲みたい感じなんですけど、こちらのイベントはアルコール抜きですかね。
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ひさびさ「俳枕」は、猫髭さんからそれとなく催促されてしまいました。季節に合わせてーーと思っていると、なかなかいいタイミングで掲載できなくて・・・すいません。現代の名句を持つ土地、又その土地で、他の俳人がどういう句を読んできたか。短い中に、読みどころがつまっています。
「林田紀音夫全句集拾読」は、昭和44年の未発表句から。昭和44年は、70年安保の前年、公害問題、映画ならニューシネマ、ATG・・・戦後から現代への分水嶺をもう越えたか、という時代です。
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そういえば「豈 weekly」、創刊を半月後くらいに控えた頃(そんなことはつゆ知らず)、ふと思い立って「週刊俳句で時評を書いてもらえませんか」と、高山れおなさんに連絡をさし上げたことがあります。
当然れおなさんからは、実はしかじかで、と丁重にお断りいただいたわけで、そのときは、自分のカンの良さと、間の悪さに、同時に感じ入ったことでした。
その「豈 weekly」が、先週で終刊をむかえたわけですが、いま振り返って思うのは、あそこに書いていた人たちはみんな、俳句全体を相手にしていたなあ、ということです。
それは、俳壇をむこうにまわして立ち回りを演じるというようなことではなく、まして「これこそ俳句の全て」とドグマを振りかざすことでもない(高山さんは「澤」に寄せた小論に「本質論ではなく」というタイトルをつけた人なので)。
立場を守って発言すればたちまち「政治的」になってしまうような、この島宇宙的に分裂した状況下で、「豈 weekly」にあっては(ちょっとは政治もあったようだけれど)、おおむねいつも、分裂など無いかのように、全体としての俳句が目指されていた。ぼんやりとしか言えないのですが、そういうことです。
俳句全体というのは、つまり、あるべき俳句ってことです。
あそこに、自分の俳句の正当化しか視野にないような論が載ったら、ずいぶん違和感があったことでしょう。
俳句全体を志向するというのは、たとえば髙柳重信がそうしたように状況を相手にするということで、それはまったく、英雄的行為であったと思います。
みなさん、お疲れさまでした。今後の、それぞれのご活躍、期待しております。
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ではまた、次の日曜日にお会いしましょう。
no.169/2010-7-18 profile
■寺澤一雄 てらさわ・かずお
1957年生まれ。「恒信風」「晩紅」「雷魚」「天為」所属。
■島田牙城 しまだ・がじょう
1957年京都市 生まれ。波多野爽波に師事。「青」編集長などを経て、現在「里俳句会」代表。邑書林編集長。句集『袖珍抄』(2000)。
邑書林 俳句の里の交差点
■Yoshiko McFarland よしこ・まくふぁーらんど
アメリカ在住。俳号はhoo。Earth Languageを創案。http://www.earthlanguage.org/
■広渡敬雄 ひろわたり・たかお
1951年福岡県生まれ、 現在千葉市在住。平成元年作句開始、能村登四郎に師事。
「沖」同人、「青垣」会員、俳句協会会員。平成11年「遠賀川」(ふらんす堂)上梓。同句集で中新田俳句大賞候補(次席)。平成21年 「ライカ」上梓(ふらんす堂)
■神野紗希 こうの・さき
1983年6月4日、愛媛県松山市生。句集に『星の地図』。お茶の水女子大学博士課程在籍。
■ 野口 裕 のぐち・ゆたか
1952 年兵庫県尼崎市生まれ。二人誌「五七五定型」(小池正博・野口裕)は4月10日に第四号を発行。入手希望の方は、yutakanoguti@mail.goo.ne.jp まで。進呈します。 サイト「野 口家のホームページ」
■上田信治 うえだ・しんじ
1961年生れ。「ハイクマシーン」「里」「豆の木」で俳句活動。ブログ「胃のかたち」
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2010-07-25
後記+プロフィール170
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1 comments:
>ひさびさ「俳枕」は、猫髭さんからそれとなく催促されてしまいました。
おねだり猫髭です。打てば響くように、「拝枕」シリーズが載っていて、それもダブルで、おお!、とむしゃぶり読みましたが、そうか、わしのつぶやきを拾ってくださったか。この辺の迅速さはウェブマガジンならではのリプライですね。「貴船と波多野爽波」は涼みに行ったことがあるので殊に印象深かった。ありがとうございました。
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