〔週俳8月の俳句を読む〕
負けっぷり
興梠 隆
夏畳蓮のごとくに腕立てり 湾 夕彦
腕がある。開け放った部屋で腕立て伏せをしている腕が。
腕がある。後ろ手をついて雨上がりの庭をぼんやり眺めている腕が。肘のあたりがちょっと反り気味の細い腕が。
腕がある。ようやく首がすわった頭を精一杯持ち上げて未知の世界を見つめようとする小さな腕が。
噴水の気高く上がり無惨に散る 奥坂まや
もっとも美しい形で水の上昇と下降を繰り返して見せるのが噴水の目的だとすると、無惨であればあるほど最良の散り方。負けっぷりの良さにつながる気持ちのいい句。
えぞにうや小屋を覗けば海ありぬ 陽美保子
小屋の中の窓によって切り取られた海を見ている作者。その海を言葉で切り取って見せてくれた作者。切り取ってくれたことで改めて海の広さに思いを馳せる僕ら。
第224号2011年8月7日
■湾 夕彦 蒟蒻笑ふ 10句 ≫読む
第225号 2011年8月14日
■陽 美保子 水差し 10句 ≫読む
第226号 2011年8月21日
■奥坂まや 一部分 10句 ≫読む
■前北かおる 蕨 餅 10句 ≫読む
第227号 2011年8月28日
■藺草慶子 秋意 10句 ≫読む
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