〔俳コレの一句〕矢口 晃の一句
将来設計……西原天気
あと二回転職をして蝌蚪になる 矢口 晃
変身譚ではあるのですが、伝奇風でも説話風でもないのは、「転職」という現実べったりな材料のせいでしょう。すでに何度か転職をした人の、将来のプランのなかに「蝌蚪」。奇想ではあるのです。
蝌蚪になるというのはどんな気持ちなのでしょうか。
おたまじゃくしを見て、かわいらしいと愛でる人もいれば、気持ち悪がる人もいるようです。先日、スピカで紹介されていた《鬱ですかおたまじやくしをあげませう》(近江満里子)という句を読んで、もらったら「もっと鬱になりそうだ」と思った自分はどちらかといえば後者です。
掲句。転職して、いい給料がとりたいとか、快適な職場でやりがいのある仕事がしたいとか、そんな期待や願望は、作者のプラン、いわゆるキャリア・プランてやつですな、それには入っていません。蝌蚪です。あの、にゅるにゅるとした…。
これをこの時代に特有の鬱屈などと軽々しく言うのはやめておきます。
おたまじゃくしが背広を着て電車で揺られている絵を、頭の中に描くことにします。
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2012-06-10
〔俳コレの一句〕矢口晃の一句 西原天気
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