2012-08-19

【俳誌を読む】『弦』2012年7月号 高畠葉子

張りつめない弦(忙しかったらお休みもします)
『弦』通巻第27号(2012年7月号)を読む

高畠葉子



隔月発行の超結社の俳誌である。弘前市を中心に、南は九州、北は北海道まで同人がいる(一人と一人であるが)。小樽に住むわたしもなんだか縁があって同人となり、一昨年は、弘前城さくらまつり俳句大会に参加した。

後書きには「どなたでも参加できます」とある。この集団のユニークな点は「1回400円で参加できます」というものだ。年会費は2000円。基本有季定型。製本は弘前近辺の会員が手作りで仕上げている。

メンバーは20名前後。隔月に兼題と詠込がだされ5句投句する。

『弦』 の内容は各自の投句と互選。その他の読物としてリレーエッセイ、百句夜行(チャレンジ句どうにもならないが捨てられない句を成仏させるコーナー。南無阿弥 陀仏)、「わたしの樹になる一句」、その他当地のメンバーが集まりいきなり始まる句会の作品や俳句総合雑誌などに掲載された句など、「消息・短信」と名づ けられた乗って載っちゃったよ報告と盛りだくさんである。また、同人の手による「俳人への道」という漫画がえらく楽しい。

「弦」は俳誌だけではなく、突如大通りに「青空書斎」なるものを作り上げ道行く人に「俳句はいかが?」と一句頂戴するというイベントもする。さすがは文化都市弘前である。「青空書斎」には何句ものが掲示されている。

では7月号から。

特別招待席より2句

風薫る和尚のいれし濃きコーヒー  小野いるま

夏草を刈りて川音近くせり  小野いるま


同人句 兼題「独活」詠込「鍵」

山独活やゆっくり暮れる親の家  吉田昼顔

やや高く髪を束ねて夏きざす  吉田昼顔

(吉田昼顔はもっともっと世に出てよい俳人だと私は思っている)

身の鍵をゆるめ青葉の風満す  実々子

山独活の太く反りたる山の色  坂本幽弦

(幽弦氏。「弦」代表。最近は大きな俳句大会の選者にもなっている。まだ若く選者席にいるとどうもスタッフに見えてしまうが最近は貫禄もついてきたろうか?)

溜息も息継ぎとしてとして花は葉に  浦 風葉

心太夜風に雨の匂いかな  吉田昼顔

さすらいの宿に無限の水芭蕉  志村肯陽

その先のことはわからぬ新茶くむ  SION

軽トラに詩集一冊花林檎  坂本幽弦

梅雨めくや型のくずれし革鞄  岡部恒田

(以上、上位句より)

かなりの詠み手から初心者までそろいなかなか読み応えのある「弦」である。400円で一度体験してみてはいかが?とオススメしたくなる俳誌だ。

連絡先 haiku.gen@gmail.com


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