2012落選展
09 嵯峨根鈴子 手と足と
飛蝗跳んで手の切れさうな緑かな
七夕のひらひらすべる竹の雨
くすりゆびこはさぬやうに曼珠沙華
松手入みづかげろふに灼かれをり
子規の忌の入浴剤のマリンブルー
かなかなや握手の右手放すとき
みづかきとしばらく歩く崩れ簗
芋煮会犬も走れば雨もはしる
穭穂に花付いてゐる棚田かな
雁瘡をいたぶるやうにサキソフォン
雉鳩の胸に深入りしてしまふ
冬うらら青虫しがみつくばかり
寒禽のこゑ嗄らしたる水面かな
銃声のとどまる空に冬の虹
雪の朝猫にも美しきことば掛け
サーカスの地べたのつづき葱を焼く
人肌のひたぶる辛き身酒かな
聖樹立つ隣りの自動販売機
お降や継ぎ目の痛き柿右衛門
うしろにも坂道つづくかじけ鳥
火を焚きし跡こんもりと穴施行
マトリョーシカ最後は燐寸擦りにけり
火を恋ふるとは口笛のとぎれとぎれ
人ごゑの燻る春の氷柱かな
あしあとの綺麗に消えて百千鳥
啓蟄の雨にあふるる壜の口
残る鴨怒りの嘴を差し交し
朧夜の地下駐車場D5番
金糸雀のふくれて春の手套かな
薇の灰汁より夜のはじまれり
花の夜の拾ひ上げたる猫の腹
その男ぶらんこに鳩あつめたる
嘘もすこしまじれるさくら吹雪かな
きくきくと畔を鳴かせて春の鴨
日を返す末黒にしづかなる起伏
末黒野や四月の空の傷ついて
メーデーのときどき走る子供かな
葉桜や小さく明り取りの窓
母の日の子供混み合ふ大浴場
衣更へて忌明けの酒を過ごしたり
触れて消す電気スタンド青葉木菟
花あふちいちにち雨の汐干潟
余震ありさうな実梅に朱が走り
あかはらに正午の水のおとなしく
山鳥を聞き分けてゆく朴の花
尺取に走りたくなる手と足と
ブレーキのあそびすこんと夏燕
手の甲で蚊柱払ふ記念写真
制服が鴨居に掛る遠花火
箱庭に戻してもらふ現住所
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2012-11-04
2012落選展 09 嵯峨根鈴子 舌のごとくに テキスト版
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注目句
火を恋ふるとは口笛のとぎれとぎれ 嵯峨根鈴子
制服が鴨居に掛る遠花火 嵯峨根鈴子
母の日の子供混み合ふ大浴場 嵯峨根鈴子
メーデーのときどき走る子供かな 嵯峨根鈴子
日を返す末黒にしづかなる起伏 嵯峨根鈴子
七夕のひらひらすべる竹の雨 嵯峨根鈴子
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