林田紀音夫全句集拾読 243
野口 裕
雨粒の走る硝子の中に病
昭和六十一年、未発表句。仰臥の姿勢から見上げた窓に走る雨粒を見たところか。無機物の方が生気横溢している。
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樹の下を出て水音の方へ行く
昭和六十一年、未発表句。「珈琲を飲むいちにちの途中にて」というような、低調な句が散見される中、この句は少し面白い。散歩途中の気ままな寄り道。心身共に余裕のある状態なのだろう。「桃花源記」の出だしを思い出したが、ちょっと個人的すぎる感想になる。
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ほとほとと木の葉滴る千社札
昭和六十一年、未発表句。紀音夫得意の仏教習俗句の中では異色作。千社札を取り上げることは珍しいし、「木の葉滴る」という表現もあまり見たことがない。木の葉降りしきる寺の境内を叙景し、淡い句ながら印象鮮明。
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2012-12-09
林田紀音夫全句集拾読243 野口裕
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