現代俳句新人賞応募(予選通過)
夕空へ 近 恵
片方の胸に心臓夏はじめ
雨催かたっぱしから薔薇をかぐ
カレー屋の前へ戻ってくる薄暑
若葉風白線の外側に足
短夜の鳥籠に飼うハムスター
青梅が太る雨の香吸いつくし
夏山へ入るすっきりしないまま
ひとごとのようにゼリーの融けている
素肌へと塗り込められている炎暑
一切をこっぱみじんに滝壺は
深呼吸して虫の夜へはいりこむ
西瓜切る太陽に見つかる前に
晴れの日は膨れると決め芒原
秋風へ旅の鞄の口ひらく
轟々と体内の水菊人形
行く秋の骨格は自由にならず
小春日の見下ろしている観覧車
金網がぎしと広がり冬の月
梟よ石釜は冷え切っている
大寒のからだから紐抜き取られ
額から突っ込んでいく深雪晴
ストーブの前のお手玉よく落とす
手品師のウサギは消えて春隣
少しだけ噛んで風船ふくらます
号令の声が小さい春の土
春の波手に乗る程のものを捨て
白木蓮より夕空へ放たれる
春の汗知らない街を映すミラー
雨音の籠もった躰暮の春
春昼の影を静かに切り離す
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2012-12-23
ひとり落選展×4テキスト 近恵 夕空へ
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