2012-12-23

ひとり落選展×4テキスト 近恵 水海月

炎環賞応募(一次予選通過)
水海月    近 恵

初夏の魚眼レンズの中に海
かさぶたに触れれば硬い守宮の夜
羽蟻来るテレビから夜浸み出して
泣きそうな水海月にも影あるか
森を夜へ深く沈めて夏の星
雲の峰力まかせに紐を引く
片足の飛び出している夏座敷
寂しさは押し込められてラムネ瓶
一箱の煙草吸い終わるまで夏至
琉金の尾鰭めまいをつれて来る
袋から袋へ移し兜虫
雨音の高く夏痩もて余す
塗り箸のてっぺん剥げて遠花火
水無月のお櫃にご飯少しだけ
西日張り付き水槽に足す酸素
梅雨明のむしってしまいたい黒子
その指は日盛りの穴ふさぐため
花さぼてん上を向くとき出る涙
かき氷つつく家族がおわるまで
ペットボトルに砂の詰っている晩夏

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