【週俳12月の俳句を読む】
直感を確かめる越智友亮
マフラーに荒れし唇引つ掛かる 平井岳人
・口元を覆うかのようにマフラーを巻いている作中主体を思い浮かべた。
・しかし、マフラーと唇が常に触れることになるために「引つ掛かる」という修辞が活きていないようにも感じられる。ということは、作中主体が何らかの動作をしていると考えられはしないか。
・携帯電話を確認しようと目線を下げたのかもしれないし、友達に声を掛けられて振り向いたのかもしれない。いずれにしても作中主体はマフラーにふと唇が触れたことを実感したのであろう。ゆえに「引つ掛かる」という修辞を用いたのであろう。
夕方の部屋夕方の電気ストーブ 上田信治
・なんともいえないさみしさを感じた。
・「夕方」という時間に作品世界が限定されたためである。日が沈みかけ、肌寒くなった部屋に鳴りわたる電気ストーブの起動音。そのほかには物音ひとつしていないような静けさがそこにはある。
・作者の心情や動作を経ずに「夕方」「部屋」「電気ストーブ」といった名詞だけで作品が構成されていることや、「夕方」という修辞を繰り返して用いたことによって、その「静けさ」が増幅されているように思えた。
第293号 2012年12月2日
■戸松九里 昨日今日明日 8句 ≫読む
■山崎祐子 追伸 10句 ≫読む
■藤井雪兎 十年前 10句 ≫読む
第294号 2012年12月9日
■竹中宏 曆注 10句 ≫読む
第295号 2012年12月16日■山崎志夏生 歌舞伎町 10句 ≫読む
■平井岳人 つめたき耳 10句 ≫読む
第296号 2012年12月23日
■上野葉月 オペレーション 10句 ≫読む
第297号 2012年12月30日
■上田信治 眠い 10句 ≫読む
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