【週俳12月の俳句を読む】
You Can't Always Get What You Want
興梠 隆
洗面に小虫の溺れ冬に入る 戸松九里
死ぬときに虫も果たして苦しむかなんて普段は気にもしない、ただの虫けらとしか思わない。ただ、水に落ちた虫がジタバタもがく様子を目にしたときだけは、虫けらも身の回りの異変を感じて、必死に何とかしようとしているのがわかる。自分は寝ぼけた頭でそれを真上から覗き込んで、もがいて描く水面の軌跡がきれいだとか、今日の朝の会議は何時からだっけ、などと別のことを考えていたりする。
ひよいと出す手が綿虫を殺めけり 山崎祐子
死の一瞬は突然やってくる。綿虫を本当に自分は見たことがあるのかどうかあまり自信がない。ずっと僕が綿虫だと信じてきたのは、どうやら、けさらんぱさらんという違う生き物だったらしい。綿虫とも気づかずに綿くずと思って丸めたこともあったかも。
マフラーに荒れし唇引つ掛かる 平井岳人
ホッカイロ最後は硬くなりにけり 山崎志夏生
暖房具を素材に、少しも暖かそうでない景を詠んだところに魅かれます。非情の世界。
雪が降る頭をのせる枕かな 上田信治
夜中、ベッドの中で目が覚める。どうやら外は雪が降り始めたらしい。見なくても気配でわかる。いま窓の外で降り続く雪を頭の中に思い描く。雪が白い枕カバーにゆっくりと降り積もっていく。
第293号 2012年12月2日
■戸松九里 昨日今日明日 8句 ≫読む
■山崎祐子 追伸 10句 ≫読む
■藤井雪兎 十年前 10句 ≫読む
第294号 2012年12月9日
■竹中宏 曆注 10句 ≫読む
第295号 2012年12月16日
■山崎志夏生 歌舞伎町 10句 ≫読む
■平井岳人 つめたき耳 10句 ≫読む
第296号 2012年12月23日
■上野葉月 オペレーション 10句 ≫読む
第297号 2012年12月30日
■上田信治 眠い 10句 ≫読む
2013-01-13
【週俳12月の俳句を読む】興梠 隆
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