林田紀音夫全句集拾読 262
野口 裕
雨の日のステンドグラス朱を流す
平成元年、未発表句。「草城全句集出版記念会」の詞書。会場となったホテルに、ステンドグラスでもあったか。朱色のガラス部分に当たる雨が血のように流れ、肺病に苦しんだ師の面影が偲ばれる。
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手花火の手に繃帯の白まじる
平成元年、未発表句。誰が怪我したのかは分からないが、花火が始まるまでは意識していなかったであろう白い繃帯。明るくなったそれぞれの手元を比べるときに、ひときわ目立つ。
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白靴で出ていちにちの疲れ溜まる
平成元年、未発表句。この自嘲は、「隅占めてうどんの箸を割り損ず」の系譜に属し、岸本水府の「ぬぎすててうちが一番よいといふ」とも一脈相通ずるだろう。外面良く無理して見栄を張った報いが夕刻にやって来る。靴擦れまで起こしているかも知れない。
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2013-04-21
林田紀音夫全句集拾読 262 野口裕
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