林田紀音夫全句集拾読 265
野口 裕
蜜柑剥くこのまま寝(いね)るには惜く
平成二年、未発表句。無聊と蜜柑の取り合わせ。無聊の果ては悔恨に行き着くのだろうが、蜜柑は現在の時間のたゆたいのを強く示唆する。無聊を発想の核とする紀音夫の句は今までにない。紀音夫にとって、夜は不安と焦燥の場だったからだ。「いね」る、というルビも異例。
●
鼻梁幽かテトラポッドに雪残る
平成二年、未発表句。テトラボッドの稜線に残る雪を、鼻梁に見立てた。無機的な文明の産物から、わずかに浮かぶ風貌は誰の面影か。
●
2013-05-12
林田紀音夫全句集拾読 265 野口裕
Posted by wh at 0:04
Labels: 野口裕, 林田紀音夫, 林田紀音夫全句集拾読
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 comments:
コメントを投稿