自由律俳句を読む 2
障子
馬場古戸暢
障子
馬場古戸暢
第一回の最後に放哉の「障子あけて置く海も暮れ切る」 を紹介したが、小豆島の南郷庵に住んでいた放哉には、 障子にまつわる句が多い。
障子が一枚ふうわりたほれた 尾崎放哉
この句など、 庵での放哉の貧しい暮らしぶりが描かれていて面白いと思う。 しかし「ふうわりたほれ」るとは、 悲惨さよりシュールな雰囲気の方が強く滲み出ている。 音読すると、その韻によっておかしみが増すことだろう。
ところで障子は、蟲たちにとっては褥となりえた。
嵐の夜の障子にて交む蟲なり 櫻井白光
櫻井白光(1883-1920)は、福岡で生まれた自由律俳人。 家にこもるほかない嵐の夜には、感覚が研ぎ澄まされる。 ふと障子をみると、蟲が交合していた。 こんな夜になんとお盛んなと思いつつ、 普段なら気付かない景を詠んだのである。
以上はおよそ100年前に詠まれた句だが、もちろん、 現代においても障子を詠んだ句はみられる。
障子開け放って母と二人の十五夜 岸田渓子
きっと縁側には、月見団子と芒が供えられてあったことだろう。 どことなく少し昔の日本を感じるのは、 私の日常に障子がないためだろうか。現代障子句を、 ほかにも探してみたいものである。
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