林田紀音夫全句集拾読 283
野口 裕
桜の芽おびただしくて夜を招く
平成四年、未発表句。この句を先頭として、二十四句の桜の句が断続する。例年、桜の句は多いが、平成四年はとりわけ多い。掲出句は、若干の不気味さを漂わせて獣めく。
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口中に飴玉さくらほころびて
飴ひとつなくなるまでの桜の芽
平成四年、未発表句。さくらと飴の取り合わせが、面白い響き合いを醸す。
跳び箱を片隅に春すぐそこに
平成四年、未発表句。桜二十四句に挟まれて、この句がある。平成六年花曜発表句に、「跳び箱は墓標のひとつ走り出す」。平成四年から六年の間に関連句が見当たらないことから、有季から無季へ作り替えた一例と考えられる。季語のあるなしよりも、句の表情までも変えてしまったことの方に注目したい。思わず、そこまで無理せんでもと言いたくなるが、余計なお世話か。
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2013-09-15
林田紀音夫全句集拾読 283 野口裕
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