【週俳10月の俳句を読む】
句の手触り
津久井健之
俳句を前にして、どう向き合うか、どう味わうか、どう捉えるか、ということは人それぞれである。十七文字の言葉の一つひとつ、そして言葉どうしの繋がりから立ちのぼるニュアンスにこれまでの言語体験、そして人生を振り返りながら心を寄せる。ニュアンスは繊細で微妙なもの。ニュアンスが重なり、混じりあえば、そこに不思議の世界が生まれる。
この小さな器から溢れ出る不思議を各々の心にどう仕舞うか、その方法は感性と読みの実践の積み重ねで獲得していくしかない。
私の俳句の読み方は、器を観る、選ぶときの感じと似ているかもしれない。かたち、色合いもさることながら、とりわけ手にしたときの「手触り」を大切にしている点でそう思う。
言葉は手に持つことはできない。だが、俳句は直感の詩であり、どこをどう切っても感覚的な言語の構造物である。様々なニュアンスを確かめていくことは、触覚的な行為なのではないだろうか。
そのようなことを雑感しつつ、次の二句に興味を持った。
タクシーを降りれば雪の田無かな 上田信治
風一片灰から灰へのりうつる 西原天気
一句目の「田無」、二句目の「のりうつる」の手触りに心地よさを覚えた。
二句目は無季であるけれども、この静かさに惹かれる。
第337号 2013年10月6日
■高橋修宏 金環蝕 10句 ≫読む
第338号 2013年10月13日
■西原天気 灰から灰へ 10句 ≫読む
■上田信治 SD 8句 ≫読む
第339号 2013年10月20日
■山口優夢 戸をたたく 10句 ≫読む
■生駒大祐 あかるき 10句 ≫読む
■村越 敦 秋の象 10句 ≫読む
第340号 2013年10月27日
■鈴木牛後 露に置く 10句 ≫読む
■荒川倉庫 豚の秋 10句 ≫読む
■髙勢祥子 秋 声 10句 ≫読む
2013-11-10
【週俳10月の俳句を読む】句の手触り 津久井健之
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