【週俳10月の俳句を読む】
草・眼帯・頂点
西原天気
■鈴木牛後 露に置く
気持ちのいい着実。地に足のついた10句(とは、牛後さんの社会的属性〔≫参考〕に引っ張られているばかりではないと思います)。
草の絮おほきなものに沿うて飛ぶ 鈴木牛後
草の絮の飛ぶところは、宙空ばかりを思い描きがちですが、モノがあれば、飛び方も違ってくる。《おほきなものに沿うて飛ぶ》は実際にきちんと見てしか成し得ない把握という気がします。
■荒川倉庫 豚の秋
荒川倉庫さんの豚句のファンであることをまず公言しておきます。自分でも「はたしてそれでいいのだろうか」と自省してみるのですが、どう思い直してみても、ファンです。
さて、今回も豚の大活躍です。豚がこの世界を動かしているのではないかと思ってしまうくらいの大活躍。
豚の眼帯とれかかり昼の月 荒川倉庫
一句挙げるのは難しいのですが、眼帯の白さ、とれかかる不安定。それらに昼の月が呼応し、いわゆるスペイシーな悦楽に満ちています。
倉庫さんの豚句は、褒めれば褒めるほど冗談みたいになってくるから困りものです。しかし、もちろん本気です。いや、これらの句群に漲る「冗談と本気の果ての呆気と知性」にはまったく追いつけないわけですが。
■髙勢祥子 秋声
南房総を走っていると道路脇にパンパスグラスが群生しているのを見て、日本的風景と不釣合いのような、そうでもないような、一種独特の気持ちが湧きました。植えるでもなく勝手に生え放題の感もある一方で、直売所で1本いくらで売っていたりもする。
パンパスグラス頂点をつくりゐる 髙勢祥子
あれって、群れてしか生えないのでしょうか。ともかく群生しか見たことがなく、まさしく、そこには頂点があって、たくさんのパンパスグラスが意思をもって頂点をつくっているようでもあります。
第337号 2013年10月6日
■高橋修宏 金環蝕 10句 ≫読む
第338号 2013年10月13日
■西原天気 灰から灰へ 10句 ≫読む
■上田信治 SD 8句 ≫読む
第339号 2013年10月20日
■山口優夢 戸をたたく 10句 ≫読む
■生駒大祐 あかるき 10句 ≫読む
■村越 敦 秋の象 10句 ≫読む
第340号 2013年10月27日
■鈴木牛後 露に置く 10句 ≫読む
■荒川倉庫 豚の秋 10句 ≫読む
■髙勢祥子 秋 声 10句 ≫読む
2013-11-10
【週俳10月の俳句を読む】草・眼帯・頂点 西原天気
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