自由律俳句を読む 25
萩原蘿月 〔1〕
馬場古戸暢
萩原蘿月(はぎわららげつ、1884-1961)は、高浜虚子門下で学んだ。碧梧桐や一碧楼、井泉水の系譜には連ならない、また別派の自由律俳人である。俳句に作者の感動を直接に表現する、独自の「感動主義」を提唱したことで知られる。
子ども健やか父の酒もゆたか 萩原蘿月
韻を踏んでいるため、明るさが醸し出されている。吾子が健やかに育ってくれているだけで、父の酒も美味しくなるというものだろう。
草を刈っても冬からの草は青い 同
子供の頃から、冬にも青い草が生えていることが不思議でならない。そういうものなのだから不思議に思う必要もないはずだが、どうにもたまに思い出してしまう。
花に遠ざかる野には風も立つなれ 同
花に/遠ざかる野には/風も立つなれ、と読んだ。花と遠ざかる野の双方に、風が立つ様を詠んだものとみたのである。花に遠ざかる/野には/風も立つなれ、と読むと、最初の「花に遠ざかる」の意味を取り難かった。どうだろうか。
顔を撫でてすべつこくて冬が面白い 同
主観を前面にだして詠みきった、きわめて「面白い」句だと思う。ここでの顔は、子どもの顔かあるいは女の顔か。どちらにせよ、あたたかい。
忘る事の願はしう冬に籠り居る 同
今回の苦難を乗り越えるには、出来事そのものを忘れるほかないのだろう。この句における「冬に籠り居る」は、今のように文明が発達していない時代だからこそ、その重みを増す。
それでは皆さんよいお年を。
※掲句は、上田都史ほか(編)『自由律俳句作品史』(1979年/永田書房)、そねだゆ「内田南草(※蘿月への言及あり)」(『自由律句のひろば』創刊号/2013年)より。
2013-12-29
自由律俳句を読む 25 萩原蘿月 〔1〕 馬場古戸暢
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