林田紀音夫全句集拾読 293
野口 裕
星を追いながらの家路寒に入る
平成五年、未発表句。有季定型に変貌した紀音夫ではあろうが、月よりは星がよく出てくる。彼らしい発想の根をそこに見る。
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水栓の漏れ校庭の空白時
平成五年、未発表句。上五中七で景ができあがっているときに、無季の句で下五を締めるのは季語をはめ込むよりも難しい。「空白時」が有効とは紀音夫も思っていないだろう。景の示唆するところが魅力あるだけに、とりあえず作ったのか。結果として、改良の時間は彼に残されてはいなかったのだが。
竹馬の誰彼往時茫漠と
平成五年、未発表句。紀音夫は、時々他人の句を改悪してしまう。もちろん、この場合は久保田万太郎の句が下敷き。悪癖ではあるが、未発表句でやる分には問題なかろう。
涎掛け傾き石の地蔵でいる
平成五年、未発表句。仏教習俗に由来した句は、第二句集以後に多くなるが、この時期には少ない。無季の写生句。
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2013-12-01
林田紀音夫全句集拾読 293 野口 裕
Posted by wh at 0:05
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