2014-01-12

自由律俳句を読む 26 萩原蘿月 〔2〕 馬場古戸暢

自由律俳句を読む 26
萩原蘿月 〔2〕

馬場古戸暢


前回に引き続き、萩原蘿月句を鑑賞する。

とろとろする父と子一人の子眠り  萩原蘿月

前回に紹介した「子ども健やか父の酒もゆたか」と合わせて鑑賞したい句。「とろとろ」からにじみ出る幸福感とあたたかさが、こちらにまで伝わってくる。

夕日夕日みんな女の子堀端  同

夕焼けのなか、堀端に座っている子供たちは皆女の子だった。こうした景が通常だったのは、昭和までのことではないか。平成の世にはなかなかみられないように感じた。

乙女よこち向くな沈む沈む陽  同

乙女と作者の関係が気になる句。この赤い景は、古き良き時代の浪漫を感じさせる。

梨を食ひ終わつて夜はひとりのものと知つた  同

梨を食っている間は、食うことに夢中なので気付かない。なにもすることがなくなった夜にはじめて、自身が孤独であることを思い知るのだろう。

酒を買ひ足して又新しい悲しみにゐる  同

前掲句の梨を食い終わったあとの出来事のようにもみえる。感情的なところを受け付けない人もあろうが、こうした直接の表現も悪くないと今夜は思った。


※掲句は、上田都史ほか(編)『自由律俳句作品史』(1979年/永田書房)、そねだゆ「内田南草(※蘿月への言及あり)」(『自由律句のひろば』創刊号/2013年)より。

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