爆発寸前の静けさ
澤田和弥句集『革命前夜』
谷口慎也
※『連衆』第66号(2013年9月刊)より転載
著者は昭和五十五年、浜松市生。第一句集である。現在『天為』同人で、跋文を有馬朗人が飾る。句集名は〈革命が死語となりゆく修司の忌〉からきているようで、寺山修司のその前衛的な青春性(手法)に、自分の進むべき道を大きく重ね合わせている。
「革命前夜」とは爆発寸前の静けさの中に在るもの。そしてその静けさの中には目に見えぬ何かが確かに動いているもの。彼の青春性の中にあるのは、そのような鬱々としたもの、野生的なもの、そして反抗的なもの等々であり、それが今回多面化された作品として表出されている。
船長の遺品は義眼修司の忌
寒晴や人体模型男前
鳥雲に盤整然としてチェスの駒
S極がS極嫌ふ極暑かな
幽霊とおぼしきものに麦茶出す
プール嫌ひ先生嫌ひみんな嫌ひ
他に〈秋めくやいつもきれいな霊柩車〉〈狐火は泉鏡花も吐きしとか〉〈茄子漬や母が捨てたる男など〉がある。
そして寺山がそうであったように、俳句形式は表現のひとつの舞台として設定されているが、寺山が全体に舞台構成=筋(すじ)に重きを置いたのに対し、澤田は役者=言葉の個性を重視していると言ってよい。
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2014-01-19
爆発寸前の静けさ 澤田和弥句集『革命前夜』 谷口慎也
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1 comments:
谷口様、「週刊俳句」編集部の皆様、拙句集をおとりあげいただきまして、誠にありがとうございます。
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