林田紀音夫全句集拾読 302
野口 裕
薄明の身を病んで苛性ソーダの艶
平成七年、未発表句。「苛性ソーダの艶」が分からず、消毒薬のクレゾールあたりのことを仮にそう呼んだのかとも思ったが、どうも釈然としない。
ウィキペディアの「水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)」にあたってみると、「パン、スナック菓子のプレッツェルの生地を水溶液に浸けて、表面のつや出しと食感改善にも利用されている。ただし、高温(170°C前後)で焼かれるため、炭酸ナトリウムに変化し製品には残らない。」との記述がある。これだろうか。
震災当時、被害が大きかった地域から、比較的被害の少なかった我が家に色んな人がちょくちょく訪れた。復旧している水道を使っての洗濯と、これも復旧しているガスを使っての暖かな食事を求めてのことだ。そして、お土産として非常用に配られた菓子パンをよく頂いた。毎度毎度の食事を菓子パンで済まさざるを得ないのは、かなり味気ないものだという話もよく聞いた。
もし、この句の「苛性ソーダの艶」が「パン、スナック菓子」の艶であるなら、前年に入院していた身には耐えがたく思われたに違いない。さらに想像をたくましくすれば、配給された食品がプレッツェルの一種である「プリッツ」(ポッキーのチョコレートをかけていないやつと言った方が分かりよいか)であれば、彼の痩身さえもが想像されるような気がする。
いずれにしろこの句の場合、「苛性ソーダ」の「苛」が句の効果を最大限に引き出してはいようが、「苛性ソーダ」が何を指すかは分かりにくい。発表句に選ばれなかった理由の一端ではあろう。
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2014-02-09
林田紀音夫全句集拾読 302 野口裕
Posted by wh at 0:03
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